スワップ投資といえば、トルコリラ、メキシコペソ、南アフリカランドなどが定番です。一方で、インドルピーに注目している人はあまり多くありません。
ところが、IG証券のドル/インドルピー売りを見ると、2026年6月18日時点で1Lotあたり1日465円のスワップが発生しています。年率に直すと11%程度。一方で、為替リスクは5%程度にとどまっており、スワップ投資家にとってはかなり面白い通貨ペアに見えます。
ただし、この高スワップはインドの政策金利が高いから発生しているわけではありません。背景にあるのは、インド中銀によるルピー防衛と、NDF市場に生じた歪みです。
本記事では、ドル/インドルピー売りのスワップがなぜ高騰しているのか、IG証券で取引する場合のポジション計算、そしてこの高スワップがいつまで続くのかについて整理します。
スワップ投資の基本戦略や、王道の高金利通貨については以下の記事も参考にしてください。
スワップ投資家が見落としている「インドルピー」とは?
スワップ投資の世界で、インドルピーはあまり見かけない通貨です。
スワップ投資といえば、トルコリラ、メキシコペソ、南アフリカランドあたりが定番です。最近では、ハンガリーフォリントやチェココルナなども注目されるようになりました。一方で、インドルピーを積極的に取引している人は、まだかなり少ない印象です。
そもそも、インドルピーを取り扱っているFX業者は非常に限られています。さらに、インドの政策金利は5.25%と、トルコリラやメキシコペソのように目立って高いわけでもありません。そのため、普通に考えると、インドルピーはスワップ投資の主役にはなりにくい通貨です。
ところが、IG証券のドル/インドルピー売りスワップを見ると、少し様子が違います。
2026年6月18日時点で、ドル/インドルピー売りのスワップは1Lotあたり1日465円。これをスワップ利回りに直すと、年率11%程度になります。一方で、ドル/インドルピーの為替リスクは5%程度と、メキシコペソ円などと比べるとかなり低めです。
【インドルピー円・ドル円・トルコリラ円の比較】

インドルピーの特徴は、対ドルで値動きが比較的安定していることです。メキシコペソ円や南アフリカランド円のリスクは年率10%近い水準ですが、ドル/インドルピーのリスクはその半分の5%程度にとどまります。
その背景は、トルコリラと同様に、インドルピーがドルにある程度連動するように管理された通貨だからです。インドルピーは、インドと米国のインフレ率格差を反映するように、緩やかなルピー安が続いている通貨です。
つまり、ドル/インドルピーは、スワップ投資で重要な「高スワップ」と「低ボラティリティ」を両立しやすい通貨ペアと言えます。現在のドル/インドルピー売りは、スワップが高い一方で、値動きは比較的安定しています。スワップ投資家にとっては、かなり魅力的な条件に見えるはずです。
では、なぜ政策金利がそこまで高くないインドルピーで、これほど高いスワップが発生しているのでしょうか。その背景には、インド中銀によるルピー防衛と、NDF市場に生じた歪みがあります。
※IG証券のUSD/INRのスワップポイントは、以下のページのエクセルファイルをダウンロードすれば確認できます。
年率11%の高スワップはなぜ発生したのか
通常、スワップポイントは2国間の金利差をもとに決まります。高金利通貨を買い、低金利通貨を売ればスワップを受け取れる、というのが基本的な仕組みです。
しかし、ドル/インドルピーの場合は少し事情が違います。
インドの政策金利は5.25%です。一方で、米ドル金利もそれなりに高い水準にあります。そのため、単純に米国とインドの金利差だけを見ると、ドル/インドルピー売りで年率11%ものスワップが出るのは、やや不自然です。
では、なぜこれほど高いスワップが発生しているのでしょうか。
背景にあるのは、インド中銀によるルピー防衛です。
下のチャートは、ドル/インドルピーの週足チャートです。ドル/インドルピーは、レートが上昇するほどインドルピー安を意味します。

ドル/インドルピーのレートを見ると、長期的にはインドルピー安が続いています。さらに、2026年に入ってからはルピー安の流れが加速しました。インドルピー安が進むと、輸入物価の上昇やインフレ圧力につながるため、インド中銀としても放置しにくくなります。
ただし、インド中銀はルピー安に対して、単純に利上げで対応しているわけではありません。政策金利は据え置きながら、為替介入、資本流入策、そしてオフショア市場(非居住者向け市場)であるNDF市場への規制を組み合わせることで、ルピー安を抑えようとしています。
補足:NDF(ノンデリバラブル・フォワード)とは?
NDFとは、実際に通貨を受け渡さず、為替レートの差額だけを米ドルなどで決済する取引です。
インドルピーのように、海外投資家が自由に現物通貨を受け渡しにくい通貨では、オフショア市場でNDFが使われます。
今回は、このNDF市場に規制が入ったことで、オンショア市場(居住者向け市場)との分断が強まり、ドル/インドルピー売りのスワップ上昇につながったと考えられます。
この結果、オンショア市場とオフショアNDF市場の分断が強まり、インドルピーNDFのスワップ金利が大きく上昇しました。
その影響は、IG証券のスワップポイントにも表れています。

上の図を見ると、3月中旬まではドル/インドルピー売りのスワップポイントは80円前後で推移していました。しかし、3月後半から急上昇し、5月以降は400円台後半まで大きく切り上がっています。
つまり、現在のドル/インドルピー売りの高スワップは、インドの政策金利が高いから発生しているわけではありません。インド中銀のルピー防衛によってNDF市場に歪みが生まれ、その歪みがIG証券のドル/インドルピー売りスワップに反映されていると考えられます。
ただし、IG証券のドル/インドルピーは、日本の一般的なFXとはポジションの考え方が少し違います。次に、スワップ利回りを計算するためのポジション金額を確認しておきます。
IG証券のUSD/INRは1Lotのポジション計算に注意
ここで、IG証券でドル/インドルピーを取引する場合のポジション計算を確認しておきます。
日本のFX会社では、ドル円なら1万通貨、メキシコペソ円なら10万通貨というように、取引数量からポジション金額をイメージしやすいです。しかし、IG証券のドル/インドルピーは、少し計算方法が違います。
IG証券の画面を見ると、USD/INRの1ポイントは0.01 INR/USDとなっています。そして、1Lotあたり1ポイント動くと、損益が1ドル動くように設計されているようです。
この場合、1Lotあたりの実質的なドル建てポジションは、以下のように計算できます。
1ドル × 94.6 ÷ 0.01
= 9,460ドル
つまり、USD/INRのレートを94.6とすると、1Lotは約9,460ドル相当のポジションになります。
これを日本円に直すと、ドル円を160円とした場合、以下のようになります。
9,460ドル × 160円
= 1,513,600円
つまり、IG証券のドル/インドルピー1Lotは、日本円で約151万円のポジションということになります。
スワップ利回りを計算するときは、この約151万円を分母にします。
2026年6月18日時点で、ドル/インドルピー売りのスワップは1Lotあたり1日465円でした。この場合、スワップ利回りは以下の通りです。
465円 × 365日 ÷ 1,513,600円
= 年率11.2%
これが、今回のドル/インドルピー売りのスワップ利回りです。
注意したいのは、465円というスワップだけを見ると大きく感じますが、1Lotあたりのポジション金額も約151万円あるということです。スワップ投資では、受け取れる金額だけでなく、その裏側にあるポジション金額を確認することが大切です。
また、ドル円レートやUSD/INRのレートが変われば、円換算のポジション金額も変わります。そのため、スワップ利回りは固定された数字ではなく、あくまでその時点のレートをもとにした概算です。
それでも、年率11%程度のスワップ利回りは、かなり高い水準です。ただし、この高スワップがずっと続くとは限りません。
高スワップはいつまで続く?スワップ低下とルピー安リスク
ここまで見ると、ドル/インドルピー売りはかなり魅力的な通貨ペアに見えます。年率11%程度のスワップが狙えて、値動きもトルコリラ円ほど激しくありません。スワップ投資家にとっては、かなり条件の良い通貨ペアと言えそうです。
ただし、この高スワップが永遠に続くとは考えない方がよいと思います。
現在のドル/インドルピー売りの高スワップは、インドの政策金利が高いから発生しているわけではありません。インド中銀のルピー防衛によってNDF市場に歪みが生まれ、その結果として一時的にスワップが高騰していると考えられます。つまり、この歪みが解消されれば、スワップも低下する可能性が高いということです。
実際、4月以前のドル/インドルピー売りスワップは、1Lotあたり80円程度でした。仮にスワップがこの水準に戻れば、スワップ利回りは年率2%前後まで低下します。現在の1Lotあたり465円というスワップは、本来2%程度でもおかしくない通貨ペアで、年率11%程度の利回りが出ている状態です。これはかなり魅力的ですが、あくまで一時的なボーナスステージと考えた方がよさそうです。
もう一つのリスクは、インド中銀がルピー安を止められない場合です。ドル/インドルピー売りは、ドル売り・インドルピー買いのポジションです。そのため、インドルピー安が進むと評価損が発生します。高スワップを受け取れても、それ以上にルピー安が進めば、トータルでは損失になる可能性があります。
その意味では、ドル/インドルピー売りは、長期で放置する王道のスワップ投資というより、インド中銀が生み出した歪みを短期的に取りに行く通貨ペアと考えています。高スワップは魅力的ですが、スワップ低下とルピー安の両方に注意しながら付き合いたいところです。
まとめ:インドルピーはスワップ投資の短期ボーナス枠
ドル/インドルピー売りは、スワップ投資家にとってかなり面白い通貨ペアです。
インドの政策金利は5.25%と、トルコリラやメキシコペソのように目立って高いわけではありません。それにもかかわらず、IG証券のドル/インドルピー売りでは、1Lotあたり1日465円という高いスワップが発生しています。
これをスワップ利回りに直すと、年率11%程度になります。一方で、ドル/インドルピーの為替リスクは4.9%程度と比較的低く、スワップ投資としてはかなり効率的な通貨ペアに見えます。
ただし、この高スワップは、インドの政策金利が高いから発生しているわけではありません。インド中銀がルピー安を抑えるために、為替介入やNDF市場への規制を行った結果、オンショア市場とオフショアNDF市場の分断が強まり、その歪みがスワップポイントに反映されていると考えられます。
つまり、現在のドル/インドルピー売りは、長期で放置する王道のスワップ投資というより、インド中銀が生み出した歪みを取りに行く短期ボーナス枠です。
ルピー安が落ち着けば、スワップは4月以前の水準に戻る可能性があります。その場合、年率11%程度あったスワップ利回りは、2%前後まで低下するかもしれません。一方で、インド中銀がルピー安を止められなければ、スワップ以上の評価損が発生する可能性もあります。
高スワップは魅力的ですが、フリーランチではありません。
それでも、現在のドル/インドルピー売りは、スワップ投資家として見逃すには少し惜しい水準です。IG証券のスワップポイントを注視しつつ、この短い期間かもしれないボーナスステージに参加したいものですね。
なお、ドル/インドルピーは取り扱い業者が限られます。スワップ投資では、通貨ペアごとに有利なFX会社を使い分けることが重要です。
メキシコペソ円やトルコリラ円など、主要な高金利通貨のスワップポイントは、以下の記事でも特集しています。👉メキシコペソはスワップ投資家の味方|結局、メキシコペソが最強説!
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