多通貨スワップ戦略は「安定して稼げる」と話題になり、Xを中心に運用を公言する人が増えています。しかし、その輝きの裏側に、ほとんどの投資家が気づいていない“致命的な弱点”があるのをご存じでしょうか。
50〜100万円までは驚くほど効率的なのに、再投資し続けた瞬間からポートフォリオは静かに崩れ始める。しかも、普段は頼りになるヘッジ構造が、いざ相場が荒れた途端にまったく機能しなくなることもあります。
本記事では、多通貨スワップ戦略の「誰も言わない弱点」を解き明かしていきます。
🔗 多通貨スワップ戦略については以下の記事も参考にしてください
・FXスワップで「多通貨スワップ戦略」を構築する!元本回収と安定収益を目指す方法とは?
・多通貨スワップ戦略のエクセルファイルを使ったポジションの決め方を解説
なぜ多通貨スワップは人気なのか?その“魅力”と広がる誤解
最近、FXの世界では「多通貨スワップ戦略」を始める人が増えているようです。
Xを中心に、ポートフォリオの公開やスワップ収益の報告が増え、
“毎日のスワップが雪だるま式に増えていく”
という視覚的なわかりやすさも相まって、少なくない投資家がこの戦略に魅了されています。

特に、GMOクリック証券のように高いスワップポイントを提供する業者が登場したことで、従来よりも効率的にポートフォリオを構築できるようになりました。
しかし、多通貨スワップは“安定して見える”一方で、その構造に起因する弱点や限界が明確に存在します。
普段は気づきにくいものの、戦略が広まった今こそ、その問題点を整理しておく価値があります。
本記事では、多通貨スワップ戦略の強みではなく、その“根本的な弱点”に焦点を当てます。
弱点①:多通貨スワップは“100万円を超えた瞬間に効率が崩れる”
多通貨スワップ戦略の魅力は、Excelで最適化したポートフォリオを作ることで、
「高スワップ × 低リスク × ハイレバレッジ」を効率よく組み合わせられる点にあります。
特に、GMOクリック証券のようにスワップが高い業者を活用すれば、証拠金50〜100万円の運用で非常に高い効率性(シャープレシオ)が実現します。
しかし、この“効率の良さ”は GMOクリック証券の建玉上限によって、ほぼ100万円で頭打ち になります。
全体のシャープレシオは安定して見えるが、“追加分”が急落する
以下のグラフは、証拠金増加に伴う
①ポートフォリオ全体のシャープレシオ
②追加した10万円のシャープレシオ
を示しています。

グラフを見ると、ポートフォリオ全体のシャープレシオ(青線)は、証拠金が増えるにつれて緩やかに低下しているだけに見えます。
このため、多くの投資家は次のように考えます。
「利益で増えた分をそのまま再投資しても問題ないだろう」
しかし、実際に問題なのは 新しく追加する10万円部分(オレンジ線) です。
GMOクリック証券は、ハンガリーフォリント円やトルコリラ円で非常に高いスワップを提供しています。一方で、これらの通貨には比較的低めの投資上限が設定されています。
そして、この上限に到達するのが ちょうど証拠金100万円付近です。
上限を超えると、本来の最適化で求められる「ヘッジバランスを取ったポジション」を追加できなくなり、投資家は次のような行動を取らざるを得ません:
- スワップを引き上げるために「対円のポジション」が増える
- バランスのとれたヘッジが効かず、ボラティリティだけが増える
- 追加10万円のシャープレシオは 激しく悪化 する
グラフでもわかる通り、追加分のシャープレシオは80〜90万円付近から急落し、100万円を超えると非常に効率の低いポジションになってしまいます。
100万円超の再投資は“別業者”を使わないと効率が大幅低下
GMOクリック証券の高スワップは強力ですが、建玉上限により最適化が機能するのは100万円までです。
100万円以降も効率的に運用したい場合は、
- 他社でトルコリラ円・ハンガリーフォリント円を追加する
- GMOクリック証券では保有していなかった南アフリカランド円などの通貨も活用する
- 通貨の分散とヘッジバランスを“再設計”する
といった方法によって、再投資部分の効率を高めることが必要です。
弱点②:ソフトペッグは永続しない:ヘッジが一瞬で壊れる理由
多通貨スワップ戦略のもうひとつの根本的な弱点は、通貨同士の“ゆるい連動関係(ソフトペッグ)”に強く依存していることです。
最適化された多通貨ポートフォリオでは、以下のような組み合わせが頻繁に登場します:
- トルコリラ円(TRY/JPY) ↔ 米ドル円(USD/JPY)
- ハンガリーフォリント円(HUF/JPY) ↔ ユーロ円(EUR/JPY)
これらは過去のデータ上「一緒に動きやすい」とされ、ヘッジ構築に活用されやすい通貨ペアです。
しかし、この“連動性”は決して永続的なものではありません。
ソフトペッグは「IMFが分類しただけ」で、国が保証しているわけではない
多くの投資家は、TRY=USD、HUF=EURが「ある程度連動する」という前提でヘッジを組みます。
しかしこれは、あくまでIMFが過去の値動きから分類した“観察上の関係”にすぎません。
トルコやハンガリーを含む新興国が、「我が国はドルやユーロに為替を連動させます」と正式に宣言しているわけではありません。
つまり、
ソフトペッグは“そう見えていただけ”であり、明日から崩れてもおかしくない。
という危うい前提の上に成り立っているのです。
危機時には相関が壊れる:過去にも何度も発生している現象
株価が大きく下落する局面や、地政学的イベントのようなリスクオフ相場では、通貨の相関関係はしばしば完全に壊れます。
過去の例では:
- アジア通貨危機時に米ドルにペッグしていたアジア通貨が暴落
- リーマンショックの時に米ドルが安全通貨として暴騰
- ユーロにペッグしていたスイスフランがペッグ放棄して暴騰
このような環境では、普段は有効なヘッジがまったく機能しなくなることがあります。
ソフトペッグは“平時には有効”ですが、不安定な相場では真っ先に壊れる構造なのです。
ソフトペッグ崩壊は、多通貨スワップ戦略にとって致命的
多通貨スワップ戦略の本質は、
- 高スワップ通貨を買い
- それと連動する低スワップ通貨を売ることで
- 実質的なボラティリティを抑える
という仕組みです。
しかし、連動性が失われれば、これらの仕組みは成り立たなくなり、戦略全体が崩壊します。
これは「大暴落時にこそ利益が出ない」という話ではなく、“大暴落時にこそ、この戦略は無力になる” という構造的な問題です。
多通貨スワップは「平時の戦略」であり、危機にはとても弱い
ソフトペッグが保たれている平常時には、多通貨スワップは安定した収益をもたらします。
しかし、市場が荒れ始めた瞬間にその前提は壊れやすく、ヘッジ構造自体が機能不全に陥ります。
したがって、多通貨スワップ戦略は
- 平時の収益を最大化する戦略であって、危機時に強い戦略ではない
- ソフトペッグの“見えない前提”を理解した上で使うことが重要
という点を理解しておく必要があります。
まとめ:多通貨スワップは“万能ではない”。正しい理解を!
多通貨スワップ戦略は、少額でも高い効率でスワップを積み上げられる便利な手法です。
しかし、その強みはGMOクリック証券の高スワップと建玉上限に強く依存しており、最適化が十分に機能するのは証拠金100万円まで。
利益をそのまま再投資していくと、上限に達した通貨の代わりに対円ポジションを無理に積み増す形となり、追加分の効率(シャープレシオ)は急激に悪化します。
さらに、戦略の土台である 通貨間の連動(ソフトペッグ) も永続しません。平時は安定して見えても、相場が荒れるとヘッジは簡単に崩れ、ボラティリティだけが跳ね上がります。
つまり、この戦略は「平時に強く、危機に弱い」という明確な性質を持っています。
だからこそ、多通貨スワップ戦略は
・GMOクリック証券では100万円までと割り切る
・それ以上は別業者・別通貨で再設計する
・相関が崩壊したら諦めるくらいの意気込みで運用する
という運用が欠かせません。
多通貨スワップ戦略は通常時は安定した収益源になるものの、その前提条件が成り立たなくなると、戦略自体が崩壊します。そのような可能性を理解したうえで、全て失ってもいいだけの金額に限定して投資する、そのような戦略だとご理解ください。
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