FX投資をしていると耳にする「スワップ3倍デー」。
水曜日のニューヨーククローズをまたげば、週末分を含めて3日分のスワップが一気にもらえる──。
「これはチャンスだ!」と気合を入れてポジションを取った経験がある人も多いでしょう。
しかし、本当に儲かっているのでしょうか?
実際には、スワップが付与される瞬間に同額の価格調整が入り、利益は帳消し。
つまり、3倍デーだから得をする、というのは幻想にすぎません。
では、スワップ投資の利益はどこで生まれているのか?
最新の研究によれば、その答えはニューヨーク市場が動いている日中の値動きにありました。
今回はその内容を、学術論文「Uncovered Interest Parity in High Frequency」をもとに解説していきます。
FXスワップ3倍デーとは?仕組みと勘違いされやすい点
水曜日のニューヨーククローズをまたぐと、3日分のスワップポイントが付与されます。
これは、FX市場が土日には休場するため、その分を前倒しで計上する仕組みです。
投資家の間では「スワップ3倍デー」と呼ばれ、ちょっとしたお祭り気分になる日でもあります。
ところが、実際にはスワップが入った瞬間に、同額分だけ為替レートが下落します。
理由は単純で、銀行や大口投資家がスワップとスポットの間で裁定取引を行うからです。
そのため、「3日分のスワップをもらえた!」と思っても、同時に同額の評価損が発生し、利益は帳消しになります。
これは、株式の「配当落ち」に近い現象です。
権利付き最終日までは株価が上昇していても、権利落ち日に配当分だけ下がってしまうのと同じ構造。
つまり、スワップ3倍デーを狙っても、短期的な利益を上乗せできるわけではないのです。
FXスワップ投資の利益はどこで発生している?最新研究で明らかに
では、実際に学術研究で何がわかったのかを見てみましょう。
紹介するのは「Uncovered Interest Parity in High Frequency」という論文です。
難しい名前ですが、要は「為替市場でスワップ(=金利差)がどんなふうに利益になっているのか」を、時間帯ごとに細かく調べた研究です。
この論文の結論はとてもシンプルです。(以下は夏時間ベースで記載します)
- スワップ発生時(ニューヨーク市場のクローズ、日本時間 午前6時)
スワップで得られる金利収入は、同じタイミングで高金利通貨が値下がりすることでほぼ相殺される。
→ 結果、オーバーナイトの利益はほぼゼロ。 - 東京時間(日本時間 午前6時~午後6時)
高金利通貨は横ばいから下落しやすく、低金利通貨は上昇しやすい。
→ スワップ取引はむしろマイナスになることが多い。 - ニューヨーク時間(日本時間 午後6時~翌午前6時)
ここでは逆に高金利通貨が上昇し、低金利通貨は下落。
→ スワップ取引の利益のほとんどがこの時間帯で生み出されていた。
最終的な結論
スワップ取引のリターンは、ほぼすべて「米国市場の日中の値動き」で発生している。
グラフで見るキャリートレードの収益
下のグラフは「キャリートレード」の時間帯別の累積リターンを示したものです。
- 横軸:米国東部時間(ET)での時刻
- 縦軸:累積リターン(年率換算)
- 青線(Δs):スポット価格の変化
- 赤点線(-fwd):スワップ(金利差)の寄与

グラフを見ると、NYクローズ後(日本の早朝から東京・ロンドン時間にかけて)はリターンが下がり続けています。
しかし米国時間が始まると、反転して右肩上がりに利益が積み上がっているのがわかります。
つまり、スワップをもらう瞬間に儲かるのではなく、米国市場が動いている時間帯に利益が生まれていることが、データでもはっきり示されているのです。
スワップ投資の利益はリスクの補償だった
研究では、スワップ取引の利益が「どの日に」「どんな理由で」発生しているのかを調べています。
まず日ごとの違いを見ると、
- FOMCや主要な経済指標の発表日では、発表をきっかけに大きく為替が動き、利益が集中していた。
- それ以外の通常日では、リターンは横ばいか、むしろマイナスになることが多かった。
つまり、スワップ取引の利益は「毎日コツコツ積み上がるもの」ではなく、イベントでリスクを引き受けたときにドンと発生することが多いのです。
さらに、その背景にあるのが「リスクプレミアム」という考え方です。
スワップ取引の利益は単なる金利差のご褒美ではなく、投資家がリスクを引き受けることへの補償として支払われているのです。
具体的には:
- イベントリスク(FOMCや雇用統計などの発表で突然動くリスク)
- 日々の変動リスク(米国市場の取引でじわじわ動くリスク)
この2種類のリスクを背負うことで、その見返りとしてスワップ取引の利益が得られているのです。
FXスワップ投資家が知っておくべき3つのポイント
ここまで見てきたように、スワップ取引の利益は「スワップ3倍デー」によって増えるものではなく、米国時間の値動きやイベントに伴うリスクの補償として生まれています。
この事実は、スワップ投資を実践する個人投資家にとって大きな示唆を与えます。
- 「スワップをもらう=そのまま利益」ではない
スワップ付与の瞬間に同額の為替調整が入り、帳消しになる。3倍デーを狙う意味はない。 - 利益は米国時間に動く
スワップ収益の正体は米国市場での値動き。ポジションを持つだけで自動的に利益が積み上がるわけではなく、マーケットの動向に依存している。 - イベントリスクを意識すべき
FOMCや雇用統計など、大きな発表がある日はリターンが集中する一方で、同時に大きな損失リスクも抱える。
「利益の源泉はリスクをとった補償である」という視点を忘れないことが大切。
つまり、スワップ投資は「寝ているだけで毎日金利がもらえる安全な戦略」ではなく、時間帯やイベントに左右される“リスクを伴う戦略”です。
この構造を理解しておくことで、「なぜ儲かるのか」「なぜ損をするのか」をより正しく判断できるようになります。
まとめ:FXスワップ3倍デーに惑わされず、仕組みを理解して投資判断を
スワップ3倍デーは特別な儲けどきと思われがちですが、実際には付与の瞬間に価格調整が入り、そこから利益が増えるわけではありません。スワップ投資の収益は、ニューヨーク市場が動いている時間帯の値動きによって生まれているのです。
さらに、利益は毎日コツコツ積み上がるものではなく、FOMCや主要経済指標の発表といったイベント時に集中する傾向があります。つまり、スワップの利益は金利差のご褒美ではなく、リスクを引き受けたことへの補償にほかなりません。
スワップ投資は「安心して寝ているだけで金利がもらえる戦略」ではなく、マーケットの変動やイベントリスクに左右されるリスク投資です。この仕組みを理解していれば、3倍デーといった表面的なイベントに惑わされず、より賢く冷静な判断で投資を続けることができるでしょう。
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