株式市場は1日24時間、常に世界のどこかで動いています。
「だからリターンも一日を通じて均等に積み上がっているのでは?」と思いきや、実はそうではありません。
驚くべきことに、米国株式のリターンのほぼすべては 米国の真夜中=日本の昼過ぎから夕方の時間帯 に集中している、という研究結果が発表されています。
もしそれが事実なら──
「米株は日本のお昼休みに買って、夕方に売るだけで勝てる?」
そんな戦略が現実味を帯びてきます。
今回はこのパズルを解き明かした論文をもとに、米株のリターンがどの時間帯に発生しているのかを解説していきます。
米国株式リターンの研究:注目の論文とは?
今回取り上げるのは、Bondarenko & Muravyevによる論文 「Market Return Around the Clock: A Puzzle」(2021年) です。
研究の対象は、ほぼ24時間取引されている E-mini S&P500先物。
この先物はS&P500指数とほぼ同じ動きをするため、時間帯ごとのリターンを観察するのに最適です。
研究者たちは「1日のどの時間帯にリターンが発生しているのか?」というシンプルな問いを立て、2004年〜2018年にわたる先物データを詳細に分析しました。
一般的に投資家は「市場は効率的に動いている」「どの時間帯でもリスクプレミアムは一定のはず」と考えがちですが、この論文はその常識を覆す結果を示しました。
結論から言えば、市場の平均リターンはわずか4時間の特定の時間帯に集中しているのです。
リターンが集中するのは日本の昼休みから!驚きの結果
分析の結果、リターンが集中しているのは 米東部時間で午後11時30分〜午前3時30分 のわずか4時間でした。
この時間帯を論文では 「EUオープン(EU-open)」 と呼んでいます。
驚くべきことに、市場の平均リターンの100%がこの4時間に発生しており、それ以外の時間帯はゼロかマイナス。

EUオープン(EU-open)時間のリターンは、年率換算すると +7.6% のリターンで、シャープレシオは 1.67 と非常に高い数値です。
一方、残りの20時間のリターンは -0.8% とむしろマイナスでした。

では、この「魔法の4時間」は日本時間でいつにあたるのでしょうか?
- 冬時間(標準時):午後1時半〜午後5時半
- 夏時間(サマータイム):午後0時半〜午後4時半
つまり日本の投資家にとっては、ちょうど 昼休みから夕方にかけて が、米国株が最も上昇しやすい時間帯なのです。
なぜ米株は米国深夜に上がるのか?
なぜ、米株のリターンが米国の真夜中=日本の昼〜夕方に集中しているのでしょうか?
論文が提示する有力な答えは、「不確実性解消仮説(Uncertainty Resolution Hypothesis)」 です。
- 夜間は米国の投資家が少なく、市場に十分な参加者がいない
- その間にニュースや情報は積み重なり、「不確実性」が徐々に蓄積する
- そしてヨーロッパの投資家が市場に参入することで、溜まっていた情報が一気に処理される
- 結果として、不確実性が解消され、価格が上昇する
この動きは VIX先物(恐怖指数先物) にも表れています。
VIX先物は夜間に上昇し、不安心理を示しますが、欧州市場が開くと低下に転じます。つまり「不安が解消される瞬間」にリターンが生じているのです。

さらにサマータイムのシフトを利用した分析からも、「アジア市場のクローズ」ではなく「欧州市場のオープン」がリターンの主因であることが確認されています。
言い換えると、米株を動かしているのはアメリカ人ではなく、欧州投資家なのかもしれないという興味深い結果が示されたのです。
投資家にとっての意味:昼休みトレードは有効か?
今回の研究結果は、個人投資家にとっても大きな示唆を与えます。
まず第一に、米株のリターンは一日のどこでも発生するわけではなく、特定の時間帯(日本時間の昼〜夕方)に集中しているという事実です。
これは「市場は効率的で、どの時間帯でも平均的にリターンを得られるはず」という従来の考えを覆すものです。
もし単純に「EUオープン前に買って、終わったら売る」という戦略をとれば、統計的には十分なリターンが期待できることになります。
つまり、日本の投資家にとっては 「昼休みに米株を買って、夕方に売る」 という行動が、理論的には最もリターンを取りやすい時間帯に合致するのです。
もちろん実際の運用には、取引コストやETFの時間制約、先物の利用可否などの現実的なハードルがあります。
しかし「時間帯によってリターンがまったく異なる」という知識は、それ自体が投資戦略を考えるうえで重要な視点になります。
さらに、この研究は「市場を動かしているのはアメリカの投資家だけではない」という点も示しています。
欧州投資家が米国株式市場にとって重要なプレーヤーであり、不確実性を解消する“鍵”となっている。
この事実を踏まえると、グローバルな市場参加者の動きや、欧州の経済イベントを無視できないことがわかります。
CFDで実践!米株を昼休みに買って夕方に売る方法
「EUオープンの4時間」に合わせて取引を行う方法の一例を紹介します。
例えば GMO外貨のCFD口座 を利用すれば、日本時間の昼休み(12:30〜13:30頃)に米国S&P500指数(米国S500)を 0.1枚だけ買い建て、帰宅時(17:00頃)に決済するだけで、この「EUオープンの魔法の4時間」に沿ったトレードが可能です。
実際に私も試してみました(下のスクリーンショット参照)。
試行回数が少なくて、結論を出すまでには至りません。

初回、負けてるじゃない・・・
さらにGMO外貨では、CFDを1日1回取引するだけで抽選キャンペーンの当選確率が上がる仕組みもあります。
キャンペーンの消化がてら、S&P500でこの時間帯のクセを狙うのも面白い選択肢です。
まとめ:米株は夜ではなく昼に動く
今回紹介した研究「Market Return Around the Clock: A Puzzle」の結論は、驚くほどシンプルで衝撃的でした。
- 米国株の平均リターンは 1日のうち4時間(EUオープン)に集中
- 日本時間にすると 昼過ぎ〜夕方(12:30〜17:30頃)
- それ以外の時間帯はゼロ、もしくはマイナスリターン
- 背景には「夜間に不確実性が溜まり、欧州投資家が市場参加で解消する」というメカニズム
つまり、米株は「米国の真夜中=日本の昼休み」に上がっていたのです。
この結果は、市場の効率性をめぐる議論に新しい視点を投げかけるだけでなく、私たち個人投資家にとっても実践的なヒントになります。
実際に、日本時間の昼休みに米国S&P500を少額だけCFDで買い、夕方に売るだけでも「EUオープンの魔法の4時間」を狙うことは可能です。しかも、GMO外貨を使えば取引コストは低く、抽選キャンペーンの当選確率アップにもつながります。
もちろん、取引コストやリスクを考慮する必要はありますが、「リターンは時間帯によって偏っている」という事実を知っておくだけでも、市場を見る目は大きく変わるはずです。
米株は、夜ではなく昼に動いている。
この視点を持つことが、あなたの投資戦略に新しいアイデアをもたらしてくれるかもしれません。
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