インベスコ世界厳選株式オープン(世界のベスト)は本当に“毎月150円”で元が取れる?分配金のカラクリとパフォーマンスを検証

高金利戦略ガイド

毎月150円という高額分配で注目を集めるファンドがあります。
その名もインベスコ世界厳選株式オープン(通称:世界のベスト)
Xでも「毎月150円もらえるなら、5年で元が取れる!」と高評価されることが多いようです。

実際、現在の基準価額は約8960円。
単純計算で60か月、つまり5年間で投資額を回収できそうに思えます。

しかし、この分配金には投資初心者が誤解しやすい落とし穴があるのです。

✅ 本記事でわかること

  • 世界のベストの分配金の仕組み
  • 分配金=利益ではない理由
  • 実際の運用成績と投資判断ポイント

「分配金が多いから安心」と考えている方にこそ読んでほしい内容です。

インベスコ世界厳選株式オープン「世界のベスト」とは?

インベスコ世界厳選株式オープン(世界のベスト)は、その名の通り、世界各国の有望企業に分散投資するアクティブファンドです。運用会社はインベスコ・アセット・マネジメントです。

特徴は何と言っても、毎月150円という高額分配です。

現在の基準価額は約8,960円(2025年6月末時点)。
単純に計算すると、年間1,800円、基準価額に対する分配利回りは約20%にもなります。

5年で投資元本が回収できるじゃない♪

この数字だけを見ると、そう思う方も多いでしょう。

しかし、実はここに大きなカラクリがあります。
次章では、多くの投資家が誤解している「分配金の真実」について解説します。

投資家が陥りやすい誤解:「分配金=儲け」ではない

分配金の原資は「運用収益」だけじゃない

「毎月150円もらえるなら安心!」
「分配金を受け取りながら老後資金に充てたい!」

インベスコ世界厳選株式オープンに限らず、高分配ファンドを選ぶ投資家の多くは、こうしたイメージを持っています。

しかし、投資信託の分配金は、必ずしも自分が投資してから得た運用収益だけで支払われているわけではありません

分配金の4つの原資

投資信託の分配金は、以下4つから支払われる仕組みです。

  1. 配当等収益(株式の配当など)
  2. 有価証券売買益(保有銘柄を売却して得た利益)
  3. 収益調整金(新規購入者からの調整金)
  4. 分配準備積立金(過去の収益を積み立てたもの)

特に重要なのが、収益調整金です。

収益調整金とは、既存の投資家が積み上げた収益と同額の分配金を、新しく入った投資家も受け取れるようにするための仕組みです。
ただし、その分配が新規投資家にとって実際の利益になるかどうかは、その後の運用成績次第です。

過去に高いリターンを上げたファンドに新規の投資家が集まると、この収益調整金がどんどん積み上がっていきます。

つまり、新しい投資家は、自分が投資してからまだ利益が出ていなくても、過去の収益を原資にした分配金を受け取っているということです。

このファンドの収益調整金は?

この表を見てください。
直近の第132期を見ると、

1万口当たりに換算(簡単に解説)

分配可能額(8,974円)の内訳は、

  • 配当等収益(A):2円
  • 有価証券売買益(B):0円
  • 収益調整金(C):8,202円
  • 分配準備積立金(D):770円

つまり、分配可能額のほとんど(8,202円)が収益調整金なのです。

この数字が意味すること

仮にファンドが今後全く収益を上げなくても、
この8,202円の収益調整金だけで、

8,202 ÷ 150 = 約54か月分

すなわち、4年半以上も毎月150円の分配金を支払うことができる計算になります。
しかし、これは運用益から生まれた分配金ではなく、
新しく買った投資家から集めた調整金を払い戻しているにすぎないということです。

このデータを踏まえ、次章では本当の実力=トータルリターンを確認します。

過去の運用成績を検証

ここまでで、インベスコ世界厳選株式オープン(世界のベスト)の分配金の仕組みがわかりました。
では、このファンドは実際に運用でどれほどの成績を残しているのでしょうか。
ウェルスアドバイザーを使って検証します。

過去のトータルリターン(年率)

  • 1年:6.8%
  • 3年:19.74%
  • 5年:22.02%(カテゴリー内6位、上位4%)
  • 10年:8.37%(カテゴリー内73位、下位77%)

カテゴリー:国際株式・グローバル・除く日本(F)

短期は好調、長期は平凡

過去5年間のパフォーマンスは、カテゴリー内156本中6位と非常に優秀です。
この期間に投資した人にとっては、基準価額も分配金も大きなリターンをもたらしたでしょう。

しかし、10年で見ると年率8.37%、カテゴリー内96本中73位と決してトップクラスとは言えない成績です。

何が言えるか?

  • 直近5年は運用スタイルが市場環境に合った結果
  • 10年という長期では平凡で、安定超過リターンを出しているわけではない

つまり、今後も過去5年のような好調が続く保証はなく、
市場環境が変われば成績も平凡になる可能性もあるということです。

結論|分配金だけで判断しない

「分配金=安心」とは限らない。冷静に全体像を見よう

インベスコ世界厳選株式オープン(世界のベスト)は、毎月150円という高額分配で多くの投資家から支持を集めています。
実際、過去5年間の運用成績は非常に優秀で、このファンドを評価する声が多いのも納得できます。

ただ一方で、莫大な収益調整金が積み上がっており、仮に今後収益が上がらなくても高分配を払い続けられる状況にあること、そして10年間という長期で見ると、必ずしも際立った成績を残しているわけではないという事実もあります。

大切なのは分配金の仕組みを理解すること

分配金は、運用で得た収益だけでなく、収益調整金や過去の積立金からも支払われる仕組みです。
これは決して悪いことではありませんが、

分配金=利益

と短絡的に考えず、分配の原資やファンド全体の運用成績を理解しておくことが重要です。

まとめ

インベスコ世界厳選株式オープンは、直近で高いパフォーマンスを上げている魅力的なファンドであることは事実です。
同時に、投資判断の際には分配金の額だけでなく、トータルリターンや分配の仕組みを踏まえた上で選択することが、後悔しない投資につながるでしょう。

※本記事は筆者個人の見解に基づくものであり、特定の投資判断を推奨するものではありません。

コメント