FXのスワップ投資で勝ち続けるためには、「通貨の固定化」ではなく「柔軟な入れ替え」が欠かせません。
かつてはオーストラリアドルやニュージーランドドルを買って円を売るだけで利益が出ましたが、2008年以降、その戦略は通用しなくなりました。
しかし、新興国通貨を含めたポートフォリオでは、その後も高いリターンを維持しています。
スワップ投資で生き残るためには、常にプレミアム(超過収益)のある通貨を見つけ、状況に応じてリバランスすることが重要です。
本記事では、最新の学術研究と実例をもとに、「スワップ投資を続けて勝ち組になるための通貨選びと戦略」を解説します。
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FXスワップ投資で稼ぎにくくなった理由|先進国通貨の金利差縮小
X(旧Twitter)や投資系コミュニティを眺めていると、こんな声をよく見かけます。
「FXのスワップ投資って、結局生き残ってる人いないよね」
「どうせスワップ狙いで始めても、最後はロスカットでしょ」
正直に言えば、これは半分は正しい意見です。
かつて2008年以前までは、オーストラリアドル(AUD)やニュージーランドドル(NZD)のような高金利の先進国通貨を買い、円を売って持ち続けていれば、それだけで利益が積み上がりました。為替変動はあっても、金利差(スワップポイント)が厚く、多少の逆風があっても長期的にはプラスに戻る環境だったのです。
ところが、2008年のリーマンショックを境に状況は一変します。世界的な低金利時代に突入し、先進国通貨同士の金利差は縮小。かつての「高金利通貨」として人気だったAUDやNZDも、もはや往年のスワップポイントを提供できなくなりました。
結果として、この旧来型の戦略(先進国の高金利通貨を買って円を売る)に依存していた投資家は、低スワップのなか為替リスクだけ負うはめになってしまい、スワップ投資から退場していきました。
FXスワップ投資における先進国没落と新興国台頭
「スワップ投資はもう稼げない」というのは、あくまで先進国通貨だけに依存した場合の話です。実は、2008年以降でも高い収益を上げ続けている戦略があります。それが新興国(エマージング)通貨を組み入れたスワップ投資です。
下のグラフは、米国NBERのワーキングペーパー「Reassessing Sources of Risk Premiums in Currency Markets」(2024年)に掲載された、キャリートレード(スワップ投資)戦略の長期成績です。

- 赤線(Carry G):先進国(G10)通貨のみ
- 青線(Carry GE):G10+変動相場制の新興国通貨
- 緑線(Carry GEX):G10+すべての新興国通貨
結果は一目瞭然です。2008年以降、先進国だけのキャリー戦略は成長がほぼ止まりましたが、新興国通貨を組み入れた戦略はその後も右肩上がりを維持しています。特に対象範囲を広く取ったGEXは、長期で見るとG10の3倍以上の投資価値を築き上げています。
このデータは、スワップ投資が「終わった」わけではなく、通貨の選び方とポートフォリオの組み方次第で今も十分機能することを示しています。
新興国通貨を組み入れるメリットと効果
高金利通貨の魅力は「スワップポイント=金利差」ですが、ひとつ大事な性質があります。
それは、投資資金が集まるほど、その通貨のプレミアム(超過収益)は低下していくということです。
かつてのオーストラリアドルやニュージーランドドルは、典型的な高金利通貨として人気を集めました。しかし、多くの投資家が同じ通貨を買い続けると、為替市場の需給が偏り、通貨が高止まりします。その状態では、金利差で得られる利益以上に、為替の下落リスクが大きくなり、結果的にトータルのリターンは縮小してしまいます。
一方で、市場参加者が少なく、まだ注目されていない新興国通貨は、投資家に十分なプレミアムを提供できる場合があります。こうした通貨は、金利差だけでなく、資本流入による為替上昇の恩恵も期待できるため、スワップ投資の総合リターンを押し上げます。
つまり、スワップ投資で収益を伸ばす鍵は、
- 「かつて儲かった通貨」を持ち続けるのではなく
- 常に新しい、高プレミアムな通貨を見つけて組み入れること
これが、通貨範囲を広げることで戦略全体のパフォーマンスが改善する最大の理由です。
直近数年間の新興国通貨の事例
この「高プレミアム通貨を探して入れ替える」という視点で振り返ると、直近の数年間でも明確な例が見つかります。
たとえば、
- 2020年代前半の代表格はメキシコペソ(MXN)
- 政策金利は10%台と高水準、対円や対米ドルで長期的に安定した推移
- スワップポイントは主要通貨ペアの中でもトップクラス
- ここ数年の中東欧通貨
- ハンガリーフォリント(HUF/JPY)やポーランドズロチ(PLN/JPY)
- 政策金利の高さに加え、日本の個人投資家からの注目度が急上昇
- 取扱業者が増え、個人でも取引しやすくなった
- 直近1年ではトルコリラ(TRY)
- 価格下落を高スワップが上回るようになった
- インフレや政策リスクも大きく、管理が必要
これらの事例に共通するのは、高い金利差を持ちながら、新興国特有のリスクが残っており、まだ市場で十分に取引が広がっていない通貨であることです。
こうした通貨をいち早く見つけ、ポートフォリオに組み入れることが、スワップ投資のリターンを高める鍵になります。
スワップ投資のリバランス戦略
スワップ投資で長く生き残り、安定したリターンを得るためには、「通貨の固定化」ではなく「柔軟な入れ替え」が欠かせません。
「今」プレミアムがある通貨を選ぶ
過去に儲かった通貨を持ち続けるのではなく、現在の市場環境で高金利かつ十分なプレミアムを持つ通貨に乗り換えることが重要です。
- 中東欧通貨やメキシコペソのように、直近で高スワップが得られる通貨
- 取引量が増えすぎていない(まだプレミアムが残っている)通貨
定期的なリバランス
金利差は時間とともに変化します。
少なくとも四半期ごと、可能であれば毎月スワップポイントや為替の動きを確認し、ポジションを入れ替える「リバランス」を実行します。
ただし、リバランスを検討した結果、リバランスを行わないということは問題ありません。
レバレッジに注意
スワップ投資をしていると、相場の変動と気持ちの変動によりレバレッジが高くなりがちです。
- 含み損が増えた結果、レバレッジが上昇
- 含み益が増えた結果、調子に乗ってレバレッジが上昇
- 結果、ロスカットに陥る
この実践ポイントを押さえておけば、「かつての勝ち組」から「退場組」へ転落することを避け、2008年以降も収益を出し続けている戦略に近づけます。
C絵筆ちゃんは、調子に乗って4回退場したよ♪
まとめ:FXのスワップ投資では常に新しい通貨ペアを検討しよう!
「スワップ投資はもう稼げない」という言葉は、先進国通貨だけに依存した旧来の戦略を指せば半分正しいかもしれません。
しかし、新興国通貨を含め、常にプレミアム(超過収益)のある高金利通貨を探し、組み入れ、入れ替えていくという発想を持てば、スワップ投資は今も十分機能します。
2008年以降のデータは、G10通貨だけのキャリー戦略は停滞した一方、エマージング通貨を組み入れた戦略はその後も右肩上がりを続けていることを示しています。
この違いを生んだのは、通貨選択とリバランスの柔軟性です。
- 過去に儲かった通貨を持ち続けない
- スワップポイントと金利差を定期的に比較
- プレミアムのある新興通貨をいち早く取り入れる
- レバレッジを正しく管理する(上げすぎない)
これらを実践すれば、「昔は儲かったけど今はもう…」という嘆きとは無縁で、長期的にスワップ投資で収益を積み上げることが可能です。
スワップ投資は、単なる放置プレイではなく、通貨を選び、入れ替え、守るための“運用戦略”として取り組むべき時代になっています。
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