メキシコペソ円で22円、トルコリラ円で40円——。
2025年現在、GMOクリック証券とGMO外貨が提示するスワップポイントは、明らかに銀行間の実勢(トムネ)を上回る水準です。
「なぜそんな高スワップが可能なのか?」「業者は赤字にならないのか?」
そして、「本当にそのスワップをもらい続けて大丈夫なのか?」
本記事では、こうした“ハラキリスワップ”と呼ばれる異常スワップの構造を、業者の収益モデルや集客戦略の変化、市場の動きとともに徹底解説します。
仕組みを理解し、リスクを管理すれば、この異常ともいえるスワップ競争も、投資家にとっては大きなチャンスとなり得ます。
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スワップポイントの異常事態
「GMOクリックとGMO外貨、また攻めてきたな……」
FX投資家のあいだで今、静かな驚きを持って語られているのが、GMOクリック証券とGMO外貨のスワップポイントの高さです。
2025年7月17日時点、特に人気の高い「メキシコペソ円」や「トルコリラ円」の買いスワップは、以下の通り。
通貨ペア | GMOクリック証券 | GMO外貨 | 実勢の銀行間スワップ(トムネ) |
---|---|---|---|
メキシコペソ円 | 22.1円 | 22.1円 | 約17円 |
トルコリラ円 | 40円 | 36.1円 | 約33円 |
※10,000通貨あたり、買いスワップ(付与)
GMOグループの2社が提示するスワップは、いずれも実勢を上回っている状況です。
たとえば、メキシコペソ円ではトムネがおよそ17円であるのに対し、GMO系2社は22.1円。トルコリラ円でも市場実勢より数円高い水準で提供されています。
これらは業者が自身の利益を削ってスワップを上乗せしていると解釈することができ、なかにはこうした状況を皮肉を込めて「ハラキリスワップ」と呼ぶ向きもあります。
当然ながら、業者が無償の慈善活動で高スワップを配っているわけではありません。
どこかでバランスを取り、ビジネスとして成立させているはずです。
では、なぜこうした高スワップを実現できるのか?
次章ではそのからくり――業者側の利益構造と取引手法について詳しく見ていきます。
なぜそんな高スワップを出せるのか?業者の儲け方
2025年7月現在、GMOクリック証券やGMO外貨が提示するスワップポイントは、銀行間の実勢(トムネ)よりも明らかに高い水準です。
当然ながら、FX業者が自社の損失を垂れ流してまでスワップを大盤振る舞いするわけではありません。
では、どのようにしてこの“高スワップ”を成立させているのでしょうか?
その背景には、業者ならではの取引構造や収益設計が存在します。
スプレッドによる収益確保
まず、FX業者の主な収益源のひとつが「スプレッド」です。
メキシコペソやトルコリラといった高金利通貨は、取引量は多いもののボラティリティも高く、主要通貨に比べてスプレッド(売買価格差)が広めに設定される傾向にあります。
このスプレッドによって、約定ごとに一定の利益を確保できるため、
その一部をスワップポイントとして顧客に“還元”する設計が可能になります。
カバー取引の“さじ加減”(シェーディング)
FX業者は、顧客に提示するレートをほんのわずかに有利・不利に調整することがあります。これを「シェード」と呼びます。
たとえば、買い注文が多く集まるメキシコペソやトルコリラなどの高金利通貨では、業者が提示レートをわずかに高めに設定し、実際にカバーする際に差益を得られるよう調整することで、スワップの原資にあてる利益を生み出すことができます。
ロスカット手数料の存在(GMOクリック証券)
GMOクリック証券では、自動ロスカット時に手数料が発生します。
具体的には、1万通貨あたり500円(1,000通貨あたり50円)が徴収される仕組みです。
一見地味な項目に思えますが、この手数料は高レバレッジで取引している場合、大きなインパクトになります。以下に具体例を示します。
【具体例】証拠金10万円でトルコリラを取引した場合
- トルコリラ円の必要証拠金:1万通貨あたり約1,462円
- 証拠金10万円を入れると、最大でおよそ68万通貨まで取引可能
- もしこのポジションがロスカット水準に達した場合、
ロスカット手数料は 68 × 500円 = 34,000円
つまり、証拠金10万円を入れていたとして、
ロスカットが執行された時点で口座に残るはずの資金が5万円だったとしても、
そこからさらに手数料3万4,000円が差し引かれ、最終残高はわずか1万6,000円になる計算です。
このように、スワップ狙いで高レバレッジをかけている投資家にとっては、
ロスカット手数料が「実質的な追加損失」としてのしかかる可能性があります。
GMOクリック証券の取引条件は透明性が高く、手数料も明示されているものの、
ポジションサイズが大きくなると意外と無視できないコストとなるため、事前にしっかり理解しておくことが重要です。
なお、同じGMOグループのGMO外貨ではロスカット手数料が発生しないため、
「スワップ目的で長期保有するなら外貨のほうが向いている」という選択肢もあり得ます。
“高スワップ=広告費”という考え方
近年では、スワップポイント自体が「広告費の代替」として機能している側面も見逃せません。
たとえば、「スワップ ランキング」や「FX スワップ 比較」などの検索ワードで上位表示されるためには、
高スワップを提示して目を引くことが極めて効果的です。
これは後の章で詳しく述べますが、広告にお金をかけずに検索やSNS経由で集客できるなら、
ある程度スワップで赤字が出てもトータルで採算が合うという計算が成立する場合もあります。
アフィリエイト戦争の崩壊と“スワップ集客”の台頭
かつて、FX業者の集客手段といえば「アフィリエイト広告」が主流でした。
ブログやSNSで口座開設を促し、ユーザーが開設・取引すれば報酬が発生する――という流れは、
長らくネット証券のマーケティングの定番手法でした。とくに2010年代後半から2020年代前半にかけては、
「FX口座開設で〇万円キャッシュバック」などのアフィリエイト広告が大量に出回り、個人ブロガーやインフルエンサーによる“推し合戦”が繰り広げられていました。
DMM FXの“報酬爆上げ”で市場崩壊へ
しかしこの構図は、DMM FXが報酬水準を極端に引き上げたことによって一変します。

DMMは、口座開設1件あたり8万円のアフィリエイト報酬を提示するなど、
他社では採算が合わないほどの“高単価”でアフィリエイターを囲いにかかりました。
1顧客が取引を止めるまでに業者にもたらす利益が平均すると5万円前後と言われています。
期待される利益を大きく超えたこの報酬によって、他のFX業者はアフィリエイト市場での競争力を失い、「この土俵では戦えない」と判断せざるを得なくなったのです。
代わりに浮上したのが“スワップ集客”
こうした中で、新たに注目されたのが「スワップポイントを武器にした自然流入型の集客」です。
具体的には、Googleで「スワップ ランキング」や「FX スワップ 比較」などのキーワードを検索したユーザーを、アフィリエイトを介さずに公式サイトへ誘導し、口座開設につなげるというスタイルです。
下の画像をご覧ください。

「スワップ ランキング」と検索すると、検索結果のトップに出てくるのが
みんかぶFXのスワップポイント比較ページです。
このページは、米ドル円・トルコリラ円・メキシコペソ円・南アランド円といったスワップ狙いに人気の通貨ペアに限定してランキングを作成しており、
このページで上位表示されることが、いまや業者にとっての“命題”となりつつあります。
このようなみんかぶや価格.comなどが運営する「FXスワップ比較ランキング」の上位に入ることを目的として、実勢スワップを超える“盛った”スワップを提示する動きが顕著になっていきます。
こうして始まった“スワップ競争”
こうした背景が、現在の「スワップ戦争」ともいえる状況を生み出しました。
一部の人気通貨ペア(メキシコペソ円・トルコリラ円・南アランド円)においては、
銀行間のトムネから乖離した“異常なスワップ”が提示されるようになったのです。
現在の勢力図とスワップ政策の転換点
スワップポイント競争の主戦場である、メキシコペソ円・トルコリラ円。
この“ハラキリ戦争”で、いったん勝者となったのは「みんなのFX」でした。
2025年に入り、みんなのFXはLIGHTペア(メキシコペソ・トルコリラ)で業界最高水準のスワップを提示し、個人投資家の注目を一身に集めました。その結果、同社の預かり資産は2025年7月末時点で1,200億円を突破。
以下のグラフが示すように、預かり資産残高は右肩上がりで拡大しています。

ポジションが積み上がると、スワップ政策は転換せざるを得ない
しかしこの急拡大は、裏を返せばみんなのFX内にメキシコペソ・トルコリラの買いポジションが“しこたま”溜まっていることを意味します。
当然ながら、スワップは保有しているポジション数に応じて「支払う側(=FX会社)」のコストにもなります。
つまり、お客が増えてポジションが積み上がるほど、高スワップを維持するのが厳しくなるのです。
実際、2025年7月に入り、みんなのFXはスワップポイントを下げ、銀行間スワップ(トムネ)に近い水準まで落としています。
これはつまり、「ハラキリスワップ」の維持に限界が来ている証拠とも言えるでしょう。
一方で“攻め”に出ているのがGMOクリック・GMO外貨
このみんなのFXのスワップ引き下げを横目に、いま攻勢を強めているのがGMOクリック証券とGMO外貨です。
実は2025年前半、みんなのFXが派手なキャンペーンで注目を集めた結果、GMOグループ2社は一時的に取引量を大きく落としたと言われています。


その反動もあり、現在はスワップを高水準で維持しながら再びシェアを奪い返しにきている状況です。
つまり「いまは取引量を取り戻すための勝負どころ」――だからこそ、
銀行間スワップを超えるハラキリ水準でも、スワップを下げない理由があるのです。
このように、スワップポイントは単なる金利差の反映ではなく、業者間のマーケティング競争・シェア争いの道具として使われているのが現実です。
ハラキリスワップを“安全に享受”するための戦略
まず大前提として、レバレッジを上げすぎないことです。
スワップを狙う投資スタイルは基本的に「時間をかけて積み上げる」ものなので、
一度の値動きでロスカットされるようなレバレッジ設計では本末転倒です。
証拠金維持率500%以上(=レバレッジ2〜3倍)を目安に設定し、
急変動にも耐えられる余裕を持つことで、スワップの“刈り取り期間”をできるだけ長く確保しましょう。
スワップの“賞味期限”は意外と短い。移動も放置も戦略
市場実勢を無視した“ハラキリスワップ”は、長期間にわたって維持されるものではありません。
今回のケースでも、まず最初に白旗を上げたのはみんなのFXでした。
急激に積み上がったポジションに対して高スワップを払い続けるのは難しくなり、現在ではスワップ水準を実勢(トムネ)に近いレベルまで引き下げています。
とはいえ、GMOクリック証券やGMO外貨も同じく、赤字を垂れ流してまで高スワップを続けることはできません。
集客目的で一時的にスワップを盛っている可能性がある以上、この2社もどこかのタイミングで水準を調整してくる可能性が高いと見られます。
とはいえ、これら3社は中長期にわたり、相対的に高いスワップを提示し続けているのは事実です。
順位の入れ替わりこそあれ、「ならして見れば大差はない」という見方もできます。
そのため、スワップ水準を見ながらより条件の良い業者へ移動するもよし、「面倒だからそのままでいいや」と固定業者で腰を据えるのも合理的な判断です。
どちらが正解というわけではなく、自分の取引スタイルや手間とのバランスを見て決めるのがベストでしょう。
まとめ|ハラキリスワップは“使い方”次第。焦らず、逃げず、付き合っていこう
メキシコペソ円やトルコリラ円に代表される高金利通貨では、一部のFX業者が実勢を無視した“ハラキリスワップ”を提示する状況が続いています。
とくにGMOクリック証券、GMO外貨、みんなのFXの3社は、このスワップ競争を通じて口座開設数や取引量の拡大を狙ってきました。
しかし、ポジションが積み上がれば業者側の負担も増す。
実際、2025年にはみんなのFXがスワップを大きく引き下げるなど、「いつまでも高スワップが続くわけではない」という現実が見え始めています。
だからこそ、スワップ投資では「今がチャンス」と無理をするのではなく、
- レバレッジは控えめに
- ロスカットや手数料を含めた実質コストで比較
- スワップが高いうちはもらい続け、下がったら無理せず移動 or 放置
といった柔軟で長期的な視点が重要です。
業者間のスワップ差はあっても、「ならして見れば大差ない」可能性もあります。
移動するのも、固定するのも、どちらも正解。
焦らず、そして逃げずに、この“ハラキリスワップ”を自分の戦略にうまく取り込むことが、賢いスワップ投資の第一歩です。
おまけ|とはいえ、みんなのFXのスワップも悪くない
今回の記事では、みんなのFXが一時的にスワップを下げたことにも触れましたが、それでもなおライトユーザーや初心者にとっては扱いやすい業者であることに変わりはありません。
- 取引画面がシンプルで直感的
- 1,000通貨単位での小口取引が可能
- スワップも水準調整されながら、依然として業界上位クラス
キャンペーンが豊富なタイミングもありますし、
「とりあえずFXを始めてみたい」という方には良い入口になると思います。
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