「高金利通貨を買えば、毎日スワップがもらえる!」
そんな言葉を見てFXを始めた人も多いのではないでしょうか。
でも実際は──
同じメキシコペソを買っているのに、業者によって1日にもらえるスワップが全然違う!?
え、それってどういうこと?
スワップって金利差でもらえるんじゃないの?
この記事では、そんな素朴な疑問に答えるべく、
- スワップポイントの仕組み(理論と実務のギャップ)
- なぜ業者によって金額が異なるのか
- 実際のデータを用いた比較
- 高スワップ投資の落とし穴と注意点
までを、図解・実例・グラフ付きでわかりやすく解説します。
スワップポイントって業者でなんでこんなにバラバラ?
FX(外国為替証拠金取引)では、ポジションを保有しているだけで毎日「スワップポイント」と呼ばれる金利差収益がもらえることがあります。特にメキシコペソやトルコリラなど、高金利通貨を買う(ロング)戦略は、スワップ狙いの投資家に人気です。
SNSやYouTubeの広告で、
「放っておくだけで毎日スワップが入る!」
「年利46%以上の“ほったらかし投資”!」
といった言葉が並び、「これはやるしかないのでは?」と思った方も多いのではないでしょうか。
しかし…
🤔 ちょっと待って。そのスワップ、業者によって全然ちがうけど?
同じトルコリラ/円の買いポジションを持っていても、
- A社では1日あたり53円もらえるのに、
- B社では1日あたり6円しかもらえない…。
なんてことはザラにあります。
実際にMINKABUのFXスワップポイント比較を見てもらえば一目瞭然です。
え?スワップって金利の差で決まるんじゃないの?
と思っていたら、それは半分正解で、半分間違いです。
この記事では、
- スワップポイントの理論的な仕組み
- 業者によってなぜ違いが出るのか
- 高金利通貨やキャンペーンの“裏側のカラクリ”
まで、FX会社の内部事情を交えながら、投資家目線でわかりやすく解説します。
スワップポイントは「金利差」で決まる? ― 基本構造をおさらい
まずは、スワップポイントの基本的な仕組みをおさらいしておきましょう。
FXにおけるスワップポイントとは、通貨ペアを構成する2つの国の政策金利の差から生まれる金利収益のことです。
ポジションを保有しているだけで、日々この差額相当のスワップが付与されたり、逆に支払うケースもあります。
💡 たとえば「メキシコペソ/円」の場合(2025年6月時点)
通貨 | 政策金利 |
---|---|
メキシコ(MXN) | 8.50% |
日本(JPY) | 0.50% |
この場合、金利差は 約8.0% になります。
この差がスワップポイントの「理論的な原資」となります。
実際のスワップポイントのイメージ(1万通貨の場合)
1万通貨のメキシコペソ/円をロングで保有していると仮定すると:
- 年間の金利差:約8.0%
- → 日割りすると、8.0% ÷ 365日 ≒ 0.0219%/日
- → 1万通貨(76,000円相当、1MXN=7.6円で換算)だと、1日あたり約17円
もちろんこれは単純化された理論値であり、実際のスワップはここからさまざまな調整が入ります。
重要なのは「理論値=現実」ではないということ
多くのFX入門書では「スワップポイント=金利差」と説明されますが、それはあくまで理論的なスタート地点にすぎません。
実際には、以下のような要因によって、業者ごとにスワップポイントは大きく変わってきます:
- FX会社が実際に運用・カバーして得られる金利水準
- 顧客のポジションバランス(買いが多ければスワップ引き下げ)
- 業者独自の営業方針(キャンペーン・見せ玉スワップ)
- 金利差以外のコスト(手数料やスプレッドとのトレードオフ)
つまり、「政策金利差だけでスワップが決まるわけではない」ということです。
同じ金利差なのに、なぜ業者でスワップが違うの?
ここまでで、スワップポイントは「通貨間の金利差」から生まれるという理屈を見てきました。
ではなぜ、同じメキシコペソ/円を買っているのに、A社では1日あたり53円、B社では6円…というような大きな差が出るのでしょうか?
スワップは「理論」ではなく「実務」で決まる
理論的には「金利差」ですが、実際には業者の調達コスト・裁量・営業戦略が反映されています。
つまり、「どのくらい抜くか・乗せるか」も含めて、スワップポイントは業者が“調整”できる領域なのです。
✅ スワップポイントが業者で異なる主な理由
① 顧客ポジションの偏り
FX会社は、顧客の「買い」と「売り」のポジションを社内で相殺(ネット)し、余った分だけ金融機関で運用します。
- 買いポジションが多ければ、スワップの支払いが膨らむ
- それを抑えるために、買いスワップを引き下げる調整が入る
- 逆に売りが多ければ、スワップを引き上げ受け取りを増やす
実は、こうした顧客のネットポジション(こういうとこで見れます)は、けっこう頻繁に変わります。
「あれ、スワップ減った…?」というときは、売りが増えてバランスが崩れたと読むのが正解のこともあります。
② カバー先のスワップレート(トムネ)から業者が“抜いている”
FX会社は、余剰ポジションをカバー先(金融機関)にヘッジします。
その際に使われるのが、トムネ(翌日渡し翌々日決済)のスワップレートです。
ここで重要なのは、このスワップレートを業者がそのまま顧客に渡しているわけではないということ。
- インターバンクで受け取ったスワップからスプレッドを抜く(マージンを取る)
- この“抜き幅”が少ない業者ほど、スワップが高く表示される
たとえば、システムトレード系の業者では「スワップはおまけ」と割り切って、常に低めに設定されていることもあります。
だから、あの業者とかあの業者はスワップ低いのね♪
③ 実際の調達金利は政策金利と異なる
メキシコの政策金利が8.5%だからといって、業者がそのまま8.5%の利回りで運用できるわけではありません。
- 実際の調達金利は、カバー先との条件や通貨流動性に依存
- 高金利通貨は市場金利の変動幅も大きく、調達は不安定
特にトルコリラ/円は、毎日というか時々刻々とスワップポイントが動きます。昼にレートを聞いたら45%だったのに、夜になったらマイナスになってたなんてこともあります。
クリック365は、カバー先の金利を素直にスワップポイントとして出しているので、実勢レートはクリック365を参考にしたらわかりやすいかもです。
④ スワップは営業戦略でもある
スワップポイントは、顧客獲得の“見せ玉”として積極的に使われています。
特にFX初心者にとっては「毎日お金が増える!」という印象を与えるため、派手なスワップ表示が集客ツールとして機能しているのです。
実際、FX会社はスワップを営業戦略として以下のように活用しています。
(1)広告日だけスワップを“盛る”
月に数日だけ、異常に高いスワップポイントを提示する業者があります。
これは「その日のスワップ実績」を広告に使うためで、表示用の“見せスワップ”として一時的に引き上げているのです。
SNS広告や比較サイトの掲載順に影響するため、意図的に調整しているケースもあります。
(2)キャンペーンで“スワップ還元”
スワップポイントをあとからキャッシュバックする方式のキャンペーンもあります。
- キャンペーン込みの高いスワップを宣伝
- 対象は新規ポジションだけなので取引コストをスワップに回してるだけ
というやり方です。スプレッドや手数料で調整しながら、合算では業者がプラスになるよう設計されています。
(3)年末の“謎の高スワップ”は予算調整?
年末や決算期に、異常に高いスワップを出す業者が出てくることがあります。
これは、業績調整やプロモーション予算の“使い切り”の可能性が高いです。
「え、いきなりスワップ倍になってる…?」という時は、「年末予算が余ったんだな」と察してOKです。
(4)キャンペーンにも“法律の壁”がある
キャンペーンには、景品表示法による上限があります。
これを超えると、他社から金融先物取引業協会に通報されて注意を受けるというガチな事案も。
派手なスワップキャンペーンが途中で打ち切られた場合は、そうした裏事情の影響かもしれません。
このように、スワップポイントは単なる金利差ではなく、FX業者の営業戦略と収益設計の中でコントロールされているのです。
高いスワップは、色々な企業努力のたまものなのね~♪
高スワップ通貨に潜む落とし穴
メキシコペソ、トルコリラ、南アフリカランド──
これらの高金利通貨は「買うだけで毎日スワップがもらえる!」という触れ込みで、個人投資家に高い人気を誇ります。
しかし、「スワップ狙い投資」には、見落とされがちな構造的なリスクがいくつもあります。
① スプレッド・約定コストが重い
高金利通貨は、スプレッド(売値と買値の差)が広めに設定されているのが一般的です。
- エントリー直後に数千円単位のマイナスになることも
- 「スワップでプラス」と思っていても、実質的にはマイナスが続いている可能性も
短期での利益確定が難しく、気づかないうちにコスト負けする構造になっています。
② 実質的に“高値づかみ”させられている
高金利通貨は、多くの投資家が買い(ロング)から入るため、業者側はこの需要に合わせてレートを高めに提示する傾向があります。
- FX業者は、投資家に高く売り、金融機関で安く買うことで利益を得る
- 結果、実際の市場価格より割高なレートでポジションを持たされることに
アプリ上では含み益が出ているように見えても、本来の適正価格で評価するとマイナスかもしれません。
③ 高スワップはいつまでも続かない
スワップが高いのは、広告やキャンペーンとして一時的に設定されているケースが多いです。
- 業者にとって、ポジションを持つだけの顧客は利益にならない
- ある程度の保有期間の後、スワップ引き下げでポジション解消を促す動きも見られる
- キャンペーンの予算切れや市場実勢の変化で、突然スワップが激減することも
「異常に高いスワップ」は、長くは続かない前提で考えておくのが安全です。
実際のスワップポイントを比較してみた
「スワップポイントって業者によってそんなに違うの?」
──そう思った方のために、実際のデータをもとにみんなのFX(LIGHTペア)とクリック365のスワップポイントを比較してみました。
✅ 比較条件
- 通貨ペア:メキシコペソ/円(MXN/JPY)
- 対象期間:2025年6月1日~16日
- ポジション:買い(ロング)1万通貨あたりの1日分スワップポイント
📈 スワップ比較グラフ

グラフから見えること
- みんなのFXは、全体的に高水準のスワップポイントを安定的に提示
- クリック365は、実勢レート(16円前後)に近い水準で、日ごとの変動も大きめ
- 両者の間に明確な乖離があり、業者のスワップ運営方針の違いがよく表れています
なぜこうなるのか?
みんなのFXは、もともとスワップ運営に積極的な業者であり、高スワップを売りにした集客戦略をとっています。
特に、今回比較対象としたのは「LIGHTペア」という、通常よりもスワップポイントが高めに設定された専用サービスで、業者側が実勢よりも高水準のスワップを意図的に提示していることが特徴です。
まとめ:スワップポイントは“金利差”だけで決まらない
スワップポイントとは本来、通貨間の金利差を反映した「持ち続けることで得られる収益」のはず──ですが、実際の提示水準には業者ごとの方針が大きく影響しています。
特に以下のような要因に注意が必要です:
- 顧客ポジションの偏りに応じた社内調整
- カバー先とのスワップ取引における“抜き”や利ざや
- 営業方針としての“見せ玉スワップ”やキャンペーンの活用
- 実際の調達コストと政策金利の乖離
つまり、スワップは単なる金利差ではなく、流動性・需給・営業政策を反映した“実務的な価格”であると言えます。
🧭 スワップ狙い投資で気をつけたいこと
- 高スワップ=常に得とは限らない(スプレッドや建値に注意)
- スワップ水準は頻繁に変動するため、鵜呑みにしない
- 数字だけを見ず、“なぜその水準なのか”を読み解く姿勢が重要
投資において「表に出ている数字」だけで判断するのは危険です。スワップポイントもまた、業者の収益モデルや営業戦略を映し出す鏡。
しっかり構造を理解して、納得のうえで選びたいですね。
追記:スワップ派におすすめの“新しい戦略”とは?
「高金利通貨は買って寝かせる」──そんなスワップ投資の常識が変わりつつあります。
いま注目されているのが、米ドル/トルコリラ(USD/TRY)の“売り”という逆転の戦略です。
米ドル/トルコリラ(USD/TRY)の売りポジションは、通貨の安定性と高スワップの両立を実現できる新たな選択肢として注目されています。
👉 詳しくはこちらの記事で解説しています:
FXスワップ派必見!トルコリラ“売り”で稼ぐ新戦略|米ドル/トルコリラが最強な理由とは?
これからスワップを武器に長期運用を考えるなら、従来の高金利通貨買いに加えて、こうした“売り戦略”も視野に入れてみてはいかがでしょうか?
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