最近、ふと「くりっく365」のスワップポイントを眺めていて気づいたことがあります。
特にトルコリラ円のスワップが、他社と比べて妙に低いのです。実際に数字を確認してみると、GMOクリック証券のトルコリラ円の買いスワップが36円なのに対して、くりっく365では28円。
その差は1万通貨あたりで1日8円、年間に換算すれば約3,000円にもなります。
「この差って、業者間でさや取り(アービトラージ)ができるんじゃないか?」
そう思ったのが今回の記事のきっかけです。
本記事では、スワップポイントの業者間さや取りの仕組みを解説した上で、実際に「GMOクリック」と「くりっく365」の2社間でどの程度の利回りが見込めるのかを試算してみます。
対象は高金利通貨で人気の5銘柄(トルコリラ、メキシコペソ、南アランド、ハンガリーフォリント、チェココルナ)。果たして本当に妙味があるのでしょうか?
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スワップさや取りとは?仕組みを解説
FXの世界では「スワップポイント」と呼ばれる金利が毎日発生します。高金利通貨を買えば受け取り、低金利通貨を買えば支払う──シンプルな仕組みですが、実は業者ごとに提示するスワップ水準は大きく異なります。
ここで登場するのが「スワップポイントの業者間さや取り」です。やり方はとても単純で、
- スワップが高い業者で買いポジションを建てる
- スワップが低い業者で売りポジションを建てる
このように両建てをすることで、為替変動の影響をほぼゼロに抑えつつ、スワップ差額だけを利益として確保することが狙えます。いわば「業者間の歪みを利用したアービトラージ」ですね。
もちろん良いことばかりではありません。両建てになるため証拠金と取引コストが2倍かかるので、実際の利回りはかなり縮小します。また、業者がスワップ水準を突然変更するリスクもあるため、「逆鞘(受け取れるどころか支払いになる)」に転じる可能性も無視できません。
それでも、条件がうまく噛み合えば低リスクでスワップを積み上げられる魅力的な手法です。今回は、特にGMOクリック証券(高スワップ)とくりっく365(低スワップ)の差に注目して検証してみます。
くりっく365はなぜスワップが低い?仕組みと背景
「くりっく365」は東京金融取引所が運営する、国内唯一の取引所FXです。店頭FXとは異なり、複数の金融機関がマーケットメイカーとして参加し、提示するレートやスワップを基に取引所が公表する仕組みになっています。そのため透明性は高く、約定力や信頼性の面では優れた特徴を持っています。
くりっく365の取引を始める場合には、東京金融取引所が取扱いを認めたFX業者に口座を開設する必要があります。GMOクリック証券もくりっく365を取り扱っていますが、残念ながら「ハンガリーフォリント/円」と「チェココルナ/円」は取り扱っていません。これらの通貨ペアの取引を行いたい場合には岡三オンラインをお勧めします。
「スワップポイント」に関しては、店頭FX業者と比べて全般的に低めに設定される傾向があります。実際、銀行間市場(トムネ)のスワップレートよりも低くなることすら珍しくありません。
なぜそうなるのかには、いくつかの理由が考えられます。
- マーケットメイカーの提示平均値:各社が無理をせず水準を提示するため、結果として“控えめ”に落ち着きやすい。
- 店頭FX業者のスワップが高すぎる:高金利通貨を目玉商品にするため、キャンペーン的に高めのスワップを提示するケースが多い。
- くりっく365の取引量減少:店頭FXに押される形で取引量が減少し、ポジションの偏りがスワップに反映されやすくなっている可能性。
実際、2025年8月の取引統計では、くりっく365全体の取引枚数は前年同月比で59%減少。人気通貨であるトルコリラ円も-62%、メキシコペソ円に至っては-70%近い大幅減となっています。

このように、主要通貨ペアですら取引量が激減している現状があり、その影響がスワップ水準の低さとして表れている可能性があるかもしれません。
マーケットメーカーもやる気ないんじゃないの?こんなに減ってると。
つまり「くりっく365」は透明性と安定性を重視する一方、スワップ面では店頭業者に比べて見劣りする立ち位置です。この特徴が、今回の「GMOクリック vs くりっく365」という比較でスワップ差を生む大きな理由となっています。
さや取りの対象通貨ペアと利回り計算方法
今回は、特に高金利通貨として人気が高く、スワップ投資の対象になりやすい5つの通貨ペアを比較対象にしました。
- トルコリラ/円(TRY/JPY)
- メキシコペソ/円(MXN/JPY)
- 南アフリカランド/円(ZAR/JPY)
- ハンガリーフォリント/円(HUF/JPY)
- チェココルナ/円(CZK/JPY)
比較の方法はシンプルです。
- GMOクリック証券の買いスワップとくりっく365の売りスワップを確認
- その差(=スワップ鞘)を計算
- 年間でどの程度の利回り(レバ1、10倍)になるかを算出
- 取引コストの回収日数
まず基礎データとして、スワップ水準・年率換算利回りを整理しました。

表を見ると、政策金利差がそのままスワップに反映されているわけではないことが分かります。特にトルコリラやハンガリーフォリントは、両社が提示するスワップ利回りに大きな差があります。
このような「業者ごとのスワップ水準の違い」を利用して、次章では実際にスワップ差を狙ったさや取りの収益性を計算してみます。
GMOクリック vs くりっく365|スワップさや取りの結果と利回り比較
それでは実際に、GMOクリック証券とくりっく365のスワップ差を「さや取り」した場合の収益性を見てみましょう。
下の表は、各通貨ペアについてスワップ差額 → 年率利回り → コスト回収日数を整理したものです。

利回りの計算方法
さや取りの年率利回り(レバ1倍)は、次の式で算出しています。

ここで「×2」としているのは、両建てのため元本が2倍となるからです。
結果のポイント
- トルコリラ/円
スワップ差8円は大きく、レバレッジを効かせれば年率40%超。ただし、スプレッドコストも重く、回収に約2か月かかる。 - ハンガリーフォリント/円
証拠金が小さいため利回りは高め(レバ10倍で50%超)。ただし、取引コストが高く回収期間は約2か月と長い。また、取引上限にかかる可能性も。 - チェココルナ/円
スワップ差7.4円は妙味あり。取引コストが軽いため、わずか11日で回収可能と計算上は優秀。 - メキシコペソ/円、南アフリカランド/円
スワップ差が小さく、利回りも1%未満。さや取り対象としては魅力に欠ける。
まとめ|スワップさや取りの魅力と注意点
今回の検証では、GMOクリックとくりっく365のスワップ差を利用した「業者間さや取り」に妙味があることが確認できました。為替リスクをほぼゼロに抑えつつ、年率数%〜50%超の利回りを狙えるのは大きな魅力です。特にトルコリラ円とハンガリーフォリント円は利回りが高く、チェココルナ円は回収が早い点で優れています。
ただし、これらはGMOクリックが営業政策上で高めのスワップを提示しているからこそ成立している面もあり、引き下げリスクは常に存在します。また、さや取り特有の注意点として、片方の口座で証拠金が減り続けるため、資金移動が間に合わなければ強制ロスカットの危険もあります。
総じて、業者間スワップさや取りは「円預金以上の金利を為替リスクなしで狙えるユニークな戦略」です。安定収益の保証はありませんが、資金に余裕を持ち、仕組みを理解して取り組めば魅力的な選択肢になり得ます。
📢 実際の取引は GMOクリック証券 で
今回の記事のさや取りを行うには GMOクリック証券 の口座が必須です。

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