多通貨スワップ戦略で使っているエクセルファイルは、基本的に中身が見える構造になっています。
スワップ水準やポジション量は自分で調整できる一方で、共分散行列だけは筆者が更新しており、自分では触れない──そんな違和感を覚えたことはないでしょうか。
新しい通貨ペアを追加したい、リスク計算の期間を過去3年に延ばしたい、あるいは更新を待たずに自分でメンテナンスしたい。そう思っても、共分散行列がブラックボックスのままでは、思うように手を入れられません。
この記事では、そのボトルネックになっている共分散行列について、データの取得からエクセルでの作成、多通貨スワップファイルへの反映までを、順を追って解説します。特別なソフトや難しい統計知識は不要で、エクセルだけで完結します。
共分散行列を自作できるようになれば、多通貨スワップファイルは「更新を待つ道具」ではなく、「自分で管理できる道具」に変わります。
その第一歩として、本記事を活用してみてください。
そもそも多通貨スワップ戦略の考え方や全体像を整理したい場合は、以下の記事が参考になります。
👉 FXスワップで「多通貨スワップ戦略」を構築する!元本回収と安定収益を目指す方法とは?
多通貨スワップ戦略の基本的な仕組みや、なぜ複数通貨を組み合わせるのかといった思想面を詳しく解説しています。👉 【2025年12月最新版】多通貨スワップ戦略の最適ポジションを更新!フォリント+リラ+フランで安定感向上【エクセルファイル配布】
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多通貨スワップファイルで「共分散行列」だけがブラックボックスな理由
多通貨スワップ戦略で使っているエクセルファイル(以下、多通貨ファイル)は、基本的には「中身が見える」ファイルです。
スワップ水準、必要証拠金、ポジション量、想定リスク──
これらはすべてセルの数式で計算されており、数式を追えば何をしているかは理解できます。
実際、スワップが変わったら数値を更新する、ポジション量を調整する、といった作業は、読者の方自身でも対応できるはずです。
しかし、多通貨ファイルの中で、ひとつだけ自分では修正しにくい部分があります。
それが、共分散行列です。
共分散行列は、
- 各通貨ペアの値動きの大きさ
- 通貨ペア同士がどれくらい一緒に動くか
を表したデータで、多通貨スワップ戦略の「リスク計算の土台」になっています。
多通貨ファイルでは、この共分散行列を筆者(C絵筆)が定期的に更新したものを使っています。
そのため、
- 新しい通貨ペアを追加したい
- リスク計算期間を「過去1年」から「過去3年」に変えたい
- ブログ更新が止まった場合でも、自分でメンテナンスしたい
と思っても、共分散行列の部分だけは、手を出しにくいという状態になりがちです。
ファイルの数式自体は見えているのに、
「肝心なリスクの数値だけはブラックボックス」
──これが、多通貨ファイルを使っていて感じる一番の違和感かもしれません。
逆に言えば、共分散行列を自分で作れるようになれば、
- 多通貨ファイルは完全に自分の管理下に置ける
- 通貨ペアや期間を自由に変えられる
- 他人の更新を待つ必要がなくなる
という状態になります。
この記事では、そのボトルネックになっている共分散行列について、
- データはどこから取ればいいのか
- どうやって日次データを扱うのか
- エクセルでどうやって共分散行列を作るのか
を、順番に解説していきます。
共分散行列を自作するために本当に必要なものは3つだけ
共分散行列と聞くと、統計ソフトやプログラミングが必要そうな印象を持つかもしれません。
しかし、多通貨ファイルで使っている共分散行列を自作するうえで、必要なものは実はかなり限られています。大きく分けると、必要なのは次の3つだけです。
1つ目は、過去の為替レート(日次データ)。
2つ目は、そのレートを日次の収益率に変換すること。
3つ目は、エクセルの標準機能で共分散を作成する。
特別な統計知識や、高度なツールは必要ありません。
多通貨ファイルでは、原則として過去1年間の日次データを使って、各通貨ペアのリスクと、通貨ペア同士の関係を計算しています。
この期間は、自分でファイルを作る場合には、過去3年にしたり、5年にしたりと、自由に変更できます。
次に必要なのが、レートを日次の収益率に変換する作業です。
とはいえ、ここで使う計算式はとても単純で、
(当日のレート ÷ 前日のレート) − 1
これだけです。
難しい理論はなく、単に前日比で何%動いたかを並べていくだけになります。
そして最後が、共分散行列の作成です。
エクセルには、共分散行列を計算するための分析ツールが標準で用意されています。
日次収益率のデータさえ揃っていれば、その範囲を指定してボタンを押すだけで、共分散行列は自動的に作成されます。
ここまでを見ると分かる通り、共分散行列の自作で一番のハードルになるのは、計算そのものではありません。
実際につまずきやすいのは、
- どこから日次データを取ればいいのか
- 必要な通貨ペアをどうやって揃えるのか
といった、データ取得の部分です。
次章では、この「最初の壁」になりやすいデータ取得について、具体的な方法を見ていきます。
共分散行列作成で多くの人がつまずく「データ取得」という壁
共分散行列を自作しようとすると、多くの人が最初にぶつかるのが、「そもそも日次データをどこから取るのか」という問題です。
計算方法自体は単純でも、材料となるデータが手に入らなければ始まりません。
FX業者のデータが使いにくい理由
まず思いつくのは、FX業者の取引画面やダウンロード機能でしょう。
しかし、実際に試してみると、多通貨スワップ戦略には不向きな点がいくつもあります。
- 日次データが用意されていない
- 過去に遡れる期間が短い
- 1通貨ペアずつしかダウンロードできない
これでは、複数通貨ペアを同時に扱う共分散行列の作成には、かなり手間がかかります。
もっとも簡単な方法:みずほ銀行の為替データ
そこでおすすめなのが、みずほ銀行のホームページに掲載されている為替データです。

このデータの大きな特徴は、
- 2002年以降の日次データが揃っている
- 主要通貨からマイナー通貨まで網羅的
- すべての通貨ペアが1シートに揃っている
- 無料で誰でも利用できる
という点にあります。

多通貨スワップ戦略で使う通貨ペアは、すべてこのデータでカバーできます。
該当ページからのデータはCSVファイルでダウンロードされます。
ダウンロード後に、エクセルで該当ファイルを開いてください。
必要な期間・通貨ペアだけを切り取る
みずほ銀行のデータは、2002年以降の長期データがまとめて提供されています。
そのため、必要な期間だけを切り取って使うことになります。
また、すべての通貨ペアを使う必要はありません。
多通貨ファイルで実際に使う通貨ペアだけを使ってください。
図:必要な期間・通貨ペアを切り取ったファイル

注意点:すべて対円の通貨ペアである
ひとつ注意点があります。
みずほ銀行の為替データは、すべて対円(◯◯/円)のレートになっています。
たとえば、
- 米ドル/円
- トルコリラ/円
- メキシコペソ/円
といった形です。
ドル/トルコリラのような通貨ペアを使いたい場合には、この対円データをもとに、別途変換する必要があります。
対円データだけで十分|クロス通貨ペアを作る考え方
前章で紹介したみずほ銀行の為替データは、すべて対円(◯◯/円)のレートになっています。
ドル/トルコリラのような、円を含まない通貨ペアを使いたい場合には、ひと工夫が必要になります。
クロス通貨は「対円」に分解して考える
ポイントは、通貨ペアを対円に分解して考えることです。
たとえば、ドル/トルコリラは、次のように考えます。
- ドル/トルコリラ =(ドル/円)÷(トルコリラ/円)
小学校のときにならった分数の割り算を思い出して、円が消えるような式を作ってください。
このように、対円レートが揃っていれば、円を媒介にして、ほとんどの通貨ペアは作れることさえ押さえておけば十分です。
実際の作業はエクセルで十分
実際の変換作業は、エクセル上でセル同士を割り算するだけです。
図:ドルトルコリラの計算方法

特別な関数やマクロは不要で、単純な計算式を縦にコピーすれば、必要な期間のデータが揃います。
為替レートを日次収益率に変換する(計算はこれだけ)
次に行うのが、これらのレートを日次の収益率に変換する作業です。
日次収益率の考え方
日次収益率とは、前日と比べて、その通貨ペアが何%動いたかを表したものです。
計算式は、とてもシンプルで、
日次収益率 =(当日のレート ÷ 前日のレート)− 1
単に「前日比」を並べていくだけ、と考えてください。
エクセルでの作業イメージ
実際の作業は、エクセルで行います。
- 各通貨ペアごとに、レートの列を用意する
- その右に、収益率の列を作る
- 前日のセルを参照して、計算式を入力する
図:日次収益率の式を入力

計算式を1か所だけ作れば、あとはコピーしていくだけで、全通貨の期間分の日次収益率が揃います。
エクセル標準機能で共分散行列を作成する方法
日次の収益率データが揃ったら、いよいよ共分散行列の作成です。
ここから先は、エクセルの標準機能だけで完結します。
分析ツールを使う準備
エクセルの上部メニューから、「データ」→「データ分析」を選択します。

「データ分析」が表示されていない場合は、
アドインの設定で「分析ツール」を有効化してください。
(この作業は最初の1回だけでOKです)
共分散行列の作成手順
「データ分析」を開いたら、分析ツールの一覧から「共分散」を選択します。

設定する項目は次のとおりです。
- 入力範囲:各通貨ペアの日次収益率のデータ

設定が終わったら、「OK」を押します。
すると、縦横に通貨ペアが並んだ共分散行列が出力されます。

解説①:上半分が空白のまま出力される理由
ここで、まず戸惑う点がひとつあります。
エクセルの共分散ツールで作成される行列は、対角より下(左下三角)だけが表示され、上半分は空白のままになります。これはエラーではありません。
共分散行列は本来、
- 左下と右上が対称
- 対角要素は各通貨ペアの分散
という性質を持っています。
そのため、エクセルは「計算結果として必要最低限の部分」だけを表示している、というわけです。
ただし、多通貨ファイルでは行列としてすべてのセルが埋まっている必要があります。
このため、
- 対角を軸にして
- 下半分の数値を
- 上半分にコピー&ペースト
する作業が必要になります。
やっていることは単純で、左右対称になるように数値を埋めるだけです。
解説②:この共分散は「日次」である点に注意
もうひとつ重要な注意点があります。
ここで作成した共分散行列は、日次データをもとに計算した「日次の共分散」です。
一方、多通貨スワップファイルでは、リスク計算を年率ベースで行っています。
そのため、このまま貼り付けるのではなく、年率換算を行う必要があります。
方法はシンプルで、
共分散行列のすべての要素に250を掛ける
だけです。
ここで使っている「250」は、1年あたりの営業日数を表しています。
1年は250営業日だから、1日の共分散を250倍すると1年の共分散になるということです。
図:上半分にコピペ、250かける、小数点表示、通貨ペア入力した行列

次章では、この共分散行列を多通貨スワップファイルに貼り付け、実際に使える形にする方法を説明します。
作成した共分散行列を多通貨スワップファイルに反映する
ここからは、この共分散行列を多通貨ファイルに反映していきます。
共分散行列を貼り付ける場所
多通貨スワップファイルでは、L行以降が共分散行列のエリアになっています。
まずは、
- 既存の共分散行列を削除
- 作成した共分散行列を、対応する位置に貼り付け
してください。
それに合わせて、左のポジションの通貨ペア・保有量・スワップポイントも修正してください。

ここでの注意点
みんなのFXのレートが前提
価格(D列)は、みんなのFXのホームページから取得するような仕組みとなっています。
よって、みんなのFXにない通貨ペアは価格は取得できないので、手入力する必要があります。
円換算額は対円通貨ペアが前提
円換算額(E列)は対円通貨ペアを前提に計算しています。
対円以外の通貨ペアは別途計算が必要になります。
通貨ペアを増減させた場合の注意点
自作の目的として多いのが、
- 新しい通貨ペアを追加したい
- 一部の通貨ペアを使わなくなった
といったケースです。
この場合、共分散行列のサイズも変わるため、ファイル内の数式と合わなくなることがあります。
その結果、リスクとシャープレシオのセルがエラー(#VALUE)となってしまいます。
これは異常ではなく、数式の参照範囲が合っていないだけです。
図:エラーの具体例

一番簡単な対処法:使わないセルを0にする
数式をきれいに直そうとすると、少し面倒に感じるかもしれません。
もっとも簡単な方法は、
- 使っていない共分散行列のセルに0を入力
- 使っていない円換算額のセルに0を入力
ことです。
これにより、入力値に空白がなくなり、リスクとシャープレシオが計算されます。
「とりあえず動かす」という意味では、この方法でまったく問題ありません。
図:ゼロを入力したところ

共分散行列を自作できると、多通貨スワップ戦略はこう変わる
ここまでで、
- 為替データの取得
- 日次収益率への変換
- 共分散行列の作成と年率換算
- 多通貨スワップファイルへの反映
- レートや円換算額の前提調整
と、一通りの流れを見てきました。
正直なところ、一度やってしまえば、どれも難しい作業ではありません。
それでも多くの人にとって、共分散行列は「触ってはいけない領域」になりがちです。
更新を待たなくてよくなる
最大の変化は、筆者の更新を待たなくてよくなることです。
- 新しい通貨ペアを試したい
- 相場環境が変わったので、長期のリスクを見たい
- 今のポートフォリオが、最近の値動きに合っているか確認したい
こうした判断を、「更新されるまで待つ」必要がなくなります。
多通貨スワップ戦略を、完全に自分のタイミングで運用できるようになります。
これができれば、C絵筆のブログを見る必要がなくなるのよ♪
まとめ|共分散行列を自作できれば、戦略は自分のものになる
多通貨スワップ戦略で使っているエクセルファイルは、基本的には中身が見える構造ですが、共分散行列だけは筆者が更新しているため、自分では修正しにくい部分でした。
そのため、新しい通貨ペアを追加したい場合や、リスク計算の期間を変えたい場合でも、手を出せずにいた人は多いと思います。
この記事では、そのボトルネックになっていた共分散行列について、データの取得からエクセルでの作成、年率換算、そして多通貨スワップファイルへの反映までを一通り整理しました。
やっていることは、日次データを集めて収益率に変換し、エクセルの標準機能で共分散を計算しているだけです。特別なツールや難しい理論は必要ありません。
共分散行列を自作できるようになると、多通貨スワップファイルはブラックボックスではなくなります。
数字の意味が分かり、前提を理解したうえで調整できるようになりますし、更新を待たずに自分の判断で戦略を管理できるようになります。
完璧な推定を目指す必要はありません。重要なのは、一貫したルールでリスクを測り、必要なときに自分で手を入れられる状態を作ることです。
多通貨スワップ戦略を「使う」だけでなく、「理解して使う」ための一歩として、本記事の内容を役立ててもらえれば幸いです。
多通貨スワップを実践するなら
この記事では、共分散行列を自作することで、多通貨スワップ戦略を自分で管理できるようになる、という話をしてきました。ただ、実際に戦略を回していくうえでは、スワップ水準や約定環境そのものも重要になります。
共分散行列を自作し、リスクを理解したうえでポジションを組むのであれば、
取引環境そのものはシンプルで信頼できる業者を使うのが、結局いちばん楽です。
これから多通貨スワップ戦略を実践してみたい方、
あるいは取引環境を見直したい方は、
GMOクリック証券を一度チェックしてみてもいいと思います。
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