年末年始のFX市場に多通貨スワップ戦略はどう対応すべき?
クリスマスから年始にかけては、欧米市場の休場が重なり、為替市場の流動性が大きく低下します。
この期間は、多くのFX業者で「原則固定スプレッド」の適用が外れ、スプレッドが通常よりも大きく拡大しやすくなります。
注意すべき点は、為替レートがほとんど動かなくても、スプレッド拡大だけで評価損が発生することです。
特に、複数通貨を組み合わせ、レバレッジを高めに取る多通貨スワップ戦略では、この影響を無視できません。
年末年始は値動きよりも、こうした「市場構造によるリスク」が前面に出やすい時期だと考えており、多通貨スワップへの影響と対応法を考察しました。
今回の試算の前提条件について
今回の試算は、現在(2025年12月現在)運用している多通貨スワップポートフォリオを対象に行いました。
目的は、年末年始にスプレッドが拡大した場合、どの程度の影響が出るのかを事前に把握しておくことです。
スプレッドの想定については、
- 直近で確認できた最大スプレッド
- 昨年のクリスマス期間に実際に発生したスプレッド
この2つを比較し、より大きい方を採用しました。
楽観的な前提ではなく、やや厳しめの条件を置いています。
また、以下の2つのケースを想定しています。
- スプレッド拡大①:ビッド・アスク均等にスプレッドが拡大
- スプレッド拡大②:ビッド・アスクの評価損が出る方にスプレッドが拡大
年末年始の実務を想定すると、どちらも起こり得るシナリオだと考えています。
試算結果の整理(現行・証拠金追加・一部決済)
現行のポジションへの影響
まず、現行のポジションを前提に、年末年始のスプレッド拡大を想定した試算結果です。
※ 下図は、現在の多通貨スワップポートフォリオに対して、
年末年始に想定される拡大スプレッドを適用した場合の影響を示しています。

現行のレバレッジは約20倍となっており、スプレッドが拡大した場合、価格が動かなくても証拠金の15〜30%程度が削られる可能性が確認できました。
証拠金を追加して対応
次に、証拠金を20万円追加した場合の試算です。
※ 下図は、証拠金を120万円に増やした状態で、同じ条件のスプレッド拡大を適用した結果です。

証拠金を追加することでレバレッジは低下し、耐久力は高まります。
ただし、スプレッドによる損失額そのものは変わりませんし、証拠金を準備するのも大変です。
ポジション決済による対応
最後に、一部ポジションを決済した場合の試算です。
※ 下図は、チェココルナとユーロといった、相対的に影響の小さい通貨を中心にポジションを縮小したケースです。

このケースでは、レバレッジが15倍前後まで低下し、スプレッド拡大時の影響も明確に小さくなりました。
まとめ
年末年始は、為替レートの変動以上に、スプレッド拡大によるリスクを意識すべき時期です。
- レバレッジ20倍前後では、スプレッドだけで想像以上に削られる
- 証拠金追加は延命策にはなるが、根本的な解決ではない
- この時期はレバレッジ15倍程度を一つの目安にしたい
- 影響の小さい通貨からポジションを縮小するのが現実的
来年の年末年始も、同じようにこの試算を見返しながら、冷静に判断したいと思います。

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