FXのスワップ投資といえば──
「高金利通貨を買って、あとは放っておけば日々スワップが積み上がる♪」
そんなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
実際、Xなどでは
「評価損がドカンと出ても、ロスカットされなきゃ負けじゃない」
「ほぼ勝ち確の戦法だから気楽♪」

といった“無責任な名言”を目にすることもあります。
確かに、スワップ投資は「日々の金利収入を積み上げる」のが本質です。評価損を深追いしない姿勢はある意味で正しいかもしれません。
しかし、現実には評価損が大きくなると精神的に不安になり、せっかくのスワップ投資を途中で手放してしまう人も少なくありません。
スワップ投資を長く続けるためには、「どれだけ安定して運用できるか」も大事なポイント。
そして、そのカギを握るのが 「どの通貨を売るか」 です。
本記事では、日本ではあまり語られない「売り通貨の選び方」に注目し、より安定したスワップ投資戦略を考えていきます。
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FXスワップ投資の“通説”に潜む落とし穴
スワップ投資は、「高金利通貨を買えば、毎日スワップポイントがもらえる」というシンプルな仕組みで知られています。
そのため、投資家の間では次のような“通説”が広がっています。
- 評価損が出てもスワップで相殺できるから気にしない
- ロスカットさえされなければ、いつか勝てる
- 高金利通貨を長く持っていれば「ほぼ勝ち確」
一見すると魅力的ですが、実際には落とし穴があります。
問題点1:評価損が膨らみやすい
高金利通貨は金利こそ高いものの、為替レートの変動が大きいのが特徴です。
そのため、一時的な円高や通貨安で評価損が一気に膨らみ、含み益に戻るまで長期間耐えなければならないケースも珍しくありません。
問題点2:精神的な負担が大きい
「ロスカットされなければ負けじゃない」とは言うものの、評価損が口座残高の大半を占める状況で冷静に構えていられる投資家は多くありません。
むしろ、不安から途中で損切りしてしまい、スワップ投資の本来の旨みを得られないことも多いのです。
問題点3:「売り通貨」を意識しない
日本の個人投資家は、ほとんどの場合「円売り×高金利通貨買い」という組み合わせで取引します。
しかし、スワップ投資は本来「買い通貨」と「売り通貨」の両方が揃って初めて成立するもの。
「どの通貨を売るか」でリスク・リターンのバランスは大きく変わります。
つまり、安定してスワップ投資を続けるためには、 「買う通貨だけでなく、売る通貨も戦略的に選ぶ」 必要があるのです。
実は“売り通貨”がリターンの安定度を決める
スワップ投資というと、多くの日本人投資家は「円を売って高金利通貨を買う」という形を思い浮かべるでしょう。
たしかに日本は長年ゼロ金利〜低金利が続いており、円は「売り通貨」として都合が良い存在でした。
しかし、世界のキャリートレード(低金利通貨で資金を調達し、高金利通貨を買う取引)は、必ずしも円をベースにしているわけではありません。
ドル調達キャリートレードが注目される理由
2025年6月のBloombergの記事では、次のように報じられています。
「ドル調達キャリートレードに注目、ボラティリティー低下が追い風。」
(2025年6月25日 Bloomberg)
ここで強調されているのは、「低リスクの通貨を売りに回すと、安定したリターンにつながる」 という点です。
円売りの限界
円は確かに低金利ですが、世界的に見れば「円高局面」では大きく動く通貨でもあります。
とくにリスクオフ相場では、円が急騰してスワップの積み上げを一気に帳消しにしてしまうこともしばしば。
つまり「円=最強の売り通貨」という常識は、必ずしも万能ではないのです。
売り通貨の選び方で安定度が変わる
スワップ投資は「買い通貨(高金利)」だけに注目しがちですが、
実際には 「売り通貨を何にするか」で評価損の大きさや投資の安定度が変わる」 というのがポイントです。
- 円売り:低金利だが、リスクが高い
- ドル売り:低リスクだが、金利コストが重い
- 人民元売り(CNH):ドルに近い動きでありながら、金利が低くコストを抑えられる
このように「売り通貨を工夫する」ことで、スワップ投資をより安定させることが可能になります。
円売りvsドル売りvsCNH売り──3パターンを比較
実際に「どの通貨を売るか」でスワップ投資の安定度が変わるのか、簡単なシミュレーションを行ってみました。
対象としたのは、人気の高金利通貨である メキシコペソ(MXN)・トルコリラ(TRY)・南アフリカランド(ZAR) です。
今回はこの3通貨を「1/3ずつ買う」という前提で、売り通貨を変えた以下の3パターンを比較しました。
パターン① 円売り(従来型)
- MXN/JPY・TRY/JPY・ZAR/JPY をそれぞれ1/3ずつロング
- 日本の個人投資家に最も馴染みのある組み合わせ
- メリット:スワップ収益は大きい
- デメリット:円高局面で評価損が膨らみやすい
パターン② ドル売り
- MXN/JPY・TRY/JPY・ZAR/JPY を1/3ずつロング
- さらに USD/JPYを1ショート(=ドル売り円買いを加える)
- メリット:高金利通貨とドル円ショートは相関が高く、組み合わせることで値動きが安定化
- デメリット:米ドルの金利が高いため、スワップの払いコストが重い
パターン③ 人民元売り(CNH)
- MXN/JPY・TRY/JPY・ZAR/JPY を1/3ずつロング
- さらに CNH/JPYを1ショート
- メリット:人民元はドルと似た動きをしつつ、金利が低いため「ドル売りより安く安定化」できる
- デメリット:流動性や取引コストに注意が必要
この3パターンを比べると、単純な「円売り」だけではなく、ドル売りやCNH売りを組み合わせた方が評価損を抑えられ、リターンの安定性が増す ことがわかります。
次章では、このシミュレーションの結果をグラフで示し、実際にどのような違いが出たのかを確認していきます。
結果と考察
シミュレーションの結果を整理すると、2025年のケースでは次のような傾向が見られました。

見えてきたポイント
- 円売り(青)
スワップ収益は大きいが、リスクオフの円高時にはパフォーマンスが悪化。 - ドル売り(赤)
パフォーマンスは比較的安定。ただしスワップ払いコストが重い。 - CNH売り(緑)
ドル売りと同等の安定性が見込めるが、劇的な差は出なかった
※注意点:売買コストは考慮していない
今回のシミュレーションは、あくまで「評価損益+スワップポイント」の単純な比較であり、実際の取引コスト(スプレッドやロールオーバー時のコストなど)は含まれていません。
特にCNH(人民元)は流動性やスプレッドが比較的広めで、コストが無視できない場合があります。
全体の考察
- 円売り一本では「上下のブレが大きく、パフォーマンスは不安定」になりやすい。
- ドル売り・CNH売りを組み合わせると「安定感が増し、長期で続けやすい」投資になる。
- 今後、米国が利下げに動けばドル売りのコストは下がり、より現実的な戦略となる可能性がある。
今後の展望と注意点
米国の利下げで「ドル売り」の環境が変わる
2025年秋以降、市場では米国の利下げ再開が予想されています。
もし実際に金利が下がれば、これまで重かった「ドル売りのスワップコスト」が軽減され、ドルを調達通貨として利用する魅力は高まるでしょう。
一方で、利下げ幅が市場予想よりも大きくなれば、円高が一段と進む可能性があります。
そうなると、従来型の「円売りスワップ投資」はパフォーマンスが悪化しやすく、資産曲線も不安定化するリスクがある点には注意が必要です。
CNH(人民元)という選択肢
ドルの代わりにCNH(オフショア人民元)を売り通貨に選ぶ方法もあります。
CNHはドルと相関が高く、しかも金利はドルより低いため、ドル売りの安定感を維持しながらスワップ払いを抑えられる可能性があります。
ただし、流動性やスプレッドなどの取引コストには注意が必要です。
実務的な注意点
- 売買コスト(スプレッド・スワップ払い):シミュレーションには含めていないため、実際の収益性はもう少し抑えめになる。
- 業者ごとのスワップ設定:同じ通貨ペアでもFX業者によってスワップポイントは大きく異なる。
- 為替変動リスク:どれだけ工夫しても、高金利通貨の急落局面では評価損が出る可能性がある。
まとめ:売り通貨を工夫して「安心して眠れるスワップ投資」へ
スワップ投資というと「どの高金利通貨を買うか」にばかり目が行きがちですが、実際には 「どの通貨を売るか」という点も投資の安定性を左右する ことが分かりました。
- 円売りだけでは、円高局面で評価損が膨らみやすい
- ドル売りを組み合わせると、相関効果で評価損を抑えやすい
- CNH売りを活用すれば、ドルと似た安定性を保ちながらスワップコストを抑制できる
さらに今後は、米国の利下げや為替市場の変動によって「円売りの不利さ」が増す可能性もあります。
だからこそ、売り通貨を戦略的に選ぶことが、長く安心して続けられるスワップ投資のカギ になるのです。
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